H･I･M･E ーactressー

第21章 日常９：耳を塞げば…

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　「はい、どうぞ」

　僕の前に、お皿に乗っけられたチョココロネが置かれる。
　お皿が真っ白だからか、いつも僕が目にするチョココロネよりも、うんと輝いて見える。

　「頂きま～す♪」

　僕は両手でチョココロネをそーっと握ると、思いっきり大きな口で、パクリとかぶりついた。

　「んふ、おいひぃ～♡」

　う～ん、このチョコ……甘過ぎず丁度良いかも♪

　「どう？ 美味しい？」
　「はい、と～っても！　僕、こんなチョココロネ、今まで食べたことないです」


　本当だよ？
　大袈裟だって言われるかもしんないけど、本当にこれまで食べて来た中で、いっちばーん美味い♡

　出来ることならこのまま持って帰りたいくらいだよ。

　でも、あれ……？


　ふと隣の翔くんに視線を向けると、驚く程不機嫌な顔をしていて……


　あ、もしかして？


　僕は半分程残ったチョココロネを二つに割ると、チョコが少ない尻尾の方を翔真くんに差し出した。

　「一緒に食べよ？」って。

　でも翔真くんは、なかなか差し出したチョココロネを受け取ってくれなくて……

　「いいよ、好物なんだろ？　智樹が全部食べなよ」
　「でも……」

　一応お客さんだからだと思うけど、僕だけってのはやっぱりちょっと気が引けちゃう。


　あ、ぞうだ♪


　「ねぇ、お口開けて？」
　「は？　なんで？」
　「いいから♪」
　「こ、こう……？」

　戸惑いつつも、僕の要求に素直に応える翔真くん。

　「はい、あ～ん♡」
　「え……？　んぐっ……」

　僕は大きく開いた翔真くんの口に、半分に割ったチョココロネを無理矢理押し込んだ。
　すると突然のことに、目を丸くしながらも口をモゴモゴさせる翔真くん。
　

　ふふ、なんだかリスみたいで可愛い♡


　「ね、美味しいでしょ？」
　「う、うん……。つか、智樹……」


　え……？


　不意に伸びて来た翔真くんの手が、僕の唇の上をスルッと撫で……

　「口の周り、チョコだらけだし……」

　そう言って、僕の唇を拭った指を、チュパッと音を立てて舐めた。

　「あ、あの……、ありが……と……」


　ってゆーか、お母さんの前……だよ？
　変に思われちゃわない？

　僕、心配だよ……