H・I・M・E ーactressー

誠奈

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第16章  日常7:眠れない僕と寝相の悪い彼

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 レジ前の行列(……って程でもないけど)を一通り捌き切り、漸く一息ついた頃、二人がDVDの棚の隙間から姿を表した。
 二人とも、とっても楽しそうに話なんかしながら、笑い合ってる。


 ……ってゆーか、随分長くない?
 二人で何してたの?


 一人だけ忙しい思いをさせられたことへの恨みもこめて、僕は二人をジトーッと睨みつけた。
 でも二人とも僕には全くお構いなしな様子で……

 「今度またゆっくり話そうね?」
 「そうだな。なんか……、二木くんとは気が合いそうだし」

 すっかり意気投合しちゃってるように見える。


 なんか僕だけ仲間はずれにされた気分なんだけど……


 「あ、あの……、和人が探してたDVD、あったの?」

 カウンター越しに二台のスマホを並べては、何やらコソコソと怪しい行動(僕の目にはそう見える)を取る二人に、さりげなーく声をかけてみる。

 「ん? ああ、無かったよ?」

 え?

 「何かね、取り扱い無いんだっけ?」

 は?

 「そうそう。そもそも置いてないみたいでさ」
 「そう……なんだ?」

 じゃあ、僕の思い違いだったってこと?
 その割には随分時間かかってたみたいだけど?

 それに、レンタル商品の取り扱いの有無は、PCの在庫管理なんちゃらを見れば分かることじゃん?
 僕よりも、うーんと頭の良い桜木くんなら、それくらいのこと分かる筈じゃん?

 変なの……


 「和の借りたかったのって、何てタイトル?」

 僕がバイトするレンタルショップは、この辺りじゃ一番大きな店舗だし、当然取り扱ってるDVDの種類も枚数も、全然比べ物にならない。
 なのに取り扱いが無いってなると、ちょっぴり気になっちゃう。

 「ちょっと待ってね?」
 「うん」

 和人がポケットの中から、クシャッと丸めた小さな紙切れを取り出した。
 そして、カウンターの上で綺麗に皺を伸ばすと、コホンと一つ咳払いをした。

 「えっと……、『先生、もう駄目……、HIME産まれちゃう♡』ってやつなんだけどね?」

 そして思いっきり意地悪な笑顔を浮かべ、店内中に響き渡るような大きな声で読み上げた。
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