H･I･M･E ーactressー

第14章 日常５：素顔の僕とお姉ちゃん？

４

　「と、と、と、停めて！」

　急に怖くなった僕は、ハンドルを握る相原さんの手を掴もうと手を伸ばした。
　でも僕の手が相原さんの手を掴むよりも前に、自然と路肩に寄り始めた車が、キキーッとタイヤを軋ませながら止まった。

　「あ、あの、ぼ、僕……、帰りま……」
　「はい、着いたよ♪」
　「す……」


　……って、へ？


　「あ、あの……」
　「だーから、着いたよ？」
　「え……？」

　頭の上に？マークを無数に並べる僕に、相原さんがクスクス笑いながら身を乗り出し、僕の身体を拘束（なんかエッチぃ♡）していたシートベルトをカチャンと外した。

　「あの、ここ……は？」

　見渡す限り極普通の……マンションやら民家なんかが建ち並ぶ住宅街に、僕の頭の上の？マークは更にその数を増す。


　あ、まさかとは思うけど、こんな閑静な住宅街のどこかで、人身売買……とか？
　え、それってマジでヤバいやつじゃん！


　「あ、あの！　僕、やっぱり帰ります」
　「え、な、なんで？」

　ドアを開けようとした僕の手を、相原さんが掴んで引き止める。

　「だ、だって僕、このまま売り飛ばされるんでしょ？　僕、まだやり残したこといっぱいあるし、そ、それに……」

　好きな人に《好き》とも言えてないし、流石に今ここで……って訳には……

　「だ、だから僕……」
　「あ、あの……さ、売り飛ばすとか？　……ちょっと何言ってんのか意味分かんないんだけど？」

　僕には相原さんの方が意味が分かんないよ……

　「だ、だから……」
　「あのね、なんか勘違いしてるみたいだけど、ココ……俺ののマンションで、ついでにＫＡＺＵも一緒に暮らしてるわけ」
　「へ……？」

　んと、つまり……相原さんとＫＡＺＵは、この見るからにお家賃高そうなマンションで、同棲してる……ってこと？
　ってゆーか、二人が付き合ってることはＫＡＺＵから聞いてたから知ってたけど、同棲してるなんて話し……聞いてないけど？

　じゃあ僕……

　「どこにも売り飛ばされたり……しない？」
　「当たり前でしょ？　なんで俺がＫＡＺＵの妹分でもあるＨＩＭＥちゃんを売り飛ばさなきゃなんないわけ？」


　そ、それもそうだよ……ね？

　ホッ……、良かったぁ♪