H･I･M･E ーactressー

第14章 日常５：素顔の僕とお姉ちゃん？

３

　「あの……、どうして相原さんが？」


　ってゆーか、どうして僕がＨＩＭＥだって分かったんだろう？


　不思議に思って首を傾げると、相原さんは二カッとばかりに顔をクシャクシャにして、空席になっている助手席を指さした。

　「取り敢えず乗って？」
　「は、はあ……」

　僕は渋々助手席に乗り込むと、相原さんがすかさず身を乗り出して、僕にシートベルトをかけた。
　左ハンドルの助手席なんて初めての経験だから、ちょっと……ってゆーか、かなり違和感を感じてしまうし、それに車体が低いせいか、腰がちょっと痛いかも。

　「あ、あの、ＫＡＺＵ……は……？」

　僕が聞くと、相原さんは一瞬おどけたように肩を竦めてから、アクセルを踏み込んだ。

　「う、うわっ……！」

　急発進する車に、シートベルトでしっかり固定されている筈の僕の身体が、シートから滑り落ちそうになる。


　相原さんて、一見優しそうで、いかにも好青年って感じだけど、アソコ・・・同様けっこうヤンチャなとこあるんだよね……って、そんなことどうでも良くて、一体どこに向かってるんだろ？

　ＫＡＺＵと待ち合わせた筈のお店はしっかり通り過ぎちゃってるし……


　「あの、どこに行くんですか？　僕、ＫＡＺＵと……」

　あ！　そう言えば、ＫＡＺＵと相原さんて冷戦中じゃなかったっけ？
　ってことはだよ、まさか相原さんに限って、そんなことないとは思うけど、でもこの状況……

　もしかして僕、ＫＡＺＵとの喧嘩の腹いせに、このままどこかに連れ去られて、んでもってどこか……それこそ海外とかに売り飛ばされたりとか？
　だって、今は……そりゃどこにでもいる平凡な男の子・・・だけど、ＨＩＭＥの時は超可愛い男の娘・・・じゃん？
　世界中どこにでもそうゆー趣味の人だっているだろうし、それなりに需要ありそうだし……

　あ、まさか……ううん、そんなこと考えたくないけど、身体中切り刻まれて、んでもって内臓取り出されて……、とか？

　え、え、それちょっと……、ううん、かなり困るんだけど！

　だって僕……、まだ桜木くんに《好き》って言えてないのに、このまま人生終えるなんて……、絶対嫌ー！