H･I･M･E ーactressー

第13章 ｓｃｅｎｅ３：待合室

２

　松下さんに腰を支えられ、いかにもドクターな椅子に腰を下ろす。
　さすがだね…、とっても座り心地が良い♪

　「何か飲むか？」

　松下さんが僕の目線まで腰を屈めて言うから、僕は顎先に人差し指をちょこんとあててから、可愛らしく小首を傾げてみせた。

　「えっと……、ＨＩＭＥ、リンゴジュースが飲みたいかな……」
　「ＯＫ、アップルな」

　言いながら松下さんはすぐ後ろに立っていた桜木くんを振り返り、白衣のポケットから取り出した財布を手渡した。

　「お前も好きなモン買って来い」ってね。


　さすが超人気男優、気前が良い！


　「潤兄は？　何かいる？」
　「俺か……、俺は水があれば……」
　「ＯＫ、行ってくる」

　松下さんから財布を受け取った桜木くんが、駆け足でスタジオを出て行く。


　ってゆーか、潤兄って……
　ふふ、なんか変な感じ。


　「それにしても……」
　「えっ……？」
　「いや、噂には聞いていたが、何度でもシタくなる身体だな」


　え？
　それって……どういう意味？


　「なんて言うか……、俺的には……だが、虐めたくなる身体っていうか……」


　え、待って？
　ますます意味が分かんないんだけど？

　え、それってさ、僕がＭっぽい・・・・ってこと？

　あるよ？
　根っからのＭだって、以前共演した男優さんに言われたこと、確かにあるよ？

　でもまさか松下さんにも言われるなんて……僕、思ってなかったよ。


　「え、えっと……、ＨＩＭＥ痛いの嫌いだよ？」

　気持ち良いのは好きだけど♡

　「だってＨＩＭＥ、注射だって怖いんだよ？」

　お尻にされる、特別な注射は好きだけど♡

　「それにＨＩＭＥ……、意地悪されるのも好きじゃないし……」

　焦らされるのは好きだけど♡

　「だからＨＩＭＥ、虐められるのは好きじゃないんだけど……」
　「く、くくく、面白いな……」
　「え……？」

　僕……、そんなお腹を抱えて笑われるような、変なこと言ったっけ？