H･I･M･E ーactressー

第10章 日常４：彼のベッド

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　困ったもんだ。
　僕は今それどころじゃないのに……


　僕はこっそり溜息を落とした。

　『ＫＡＺＵお姉ちゃんには、ＨＩＭＥから一度お話してみますね』
　『だから、相原さんはたんこぶちゃんをよ～っく冷やして上げて？』
　『あとは、ＨＩＭＥにお・ま・か・せ♡』

　それだけを、相原さんが返す間もないくらい超高速で打ち込むと、僕はＨＩＭＥ専用スマホを電源から落とした。

　ＨＩＭＥモードの時ならそんなでもないんだけど、例えメッセージのやり取りであっても、智樹モードの状態でいる時にＨＩＭＥモードで……ってのは、ひっじょーに疲れる。

それにずっとスマホの画面で文字を追っていたせいか、目がチカチカしてくるしさ……

　「はあ……、なんだか肩こっちゃった」

　僕は一つ大きく伸びをすると、二人がけのソファにゴロンと横になった。


　あ、けっこう寝心地良いかも♪
　サイズ感も、僕に丁度良いし、このまま寝ちゃおうかな……


　でも、瞼を閉じかけた僕の脳裏に、ふとＨＩＭＥのＤＶＤを食い入るように見ていた桜木くんの背中が思い浮かんで……
　僕は勢い良く飛び起きると、テーブルの横に置かれたゴミ箱をそっと覗いた。

　「やっぱり、そう……だよね……」

　ゴミ箱の中には、クシャクシャッと丸められたティッシュが何枚もあって、桜木くんがＨＩＭＥのＤＶＤをオカズにナニをしていたって痕跡が、しっかり過ぎるくらいしっかりと残されていた。


　ここで桜木くんは僕（正確にはＨＩＭＥの、だけど）のあんな姿やこんな姿を見ながら、一人で？


　そう思ったら、そこで寝るのがどうしてだか躊躇われて、僕はソファからそっと降りると、桜木くんの眠るベッドを振り返った。
　桜木くんは相変わらずＨＩＭＥの等身大抱き枕に両手両足を絡め、盛大ないびきをかいている。


　あーあ、お布団跳ね除けちゃって……
　ちょっと寝相悪過ぎじゃない？