H･I･M･E ーactressー

第８章 ｓｃｅｎｅ２：ハートのバスタブ

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　「あ、それいいわね？　私も待ち受けにしちゃおうかしら♪」

　僕が設定した待ち受け画面を覗き込んで、ＫＡＺＵが鼻歌を歌いながら自分のスマホを操作する。

　「見て？　お揃いよ？」

　嬉しそうに僕にスマホの画面を見せて来るＫＡＺＵ。

　「ふふ、ホントだぁ♪」

　憧れのＫＡＺＵと共演出来ただけでも嬉しいのに、待ち受けまでお揃いなんて……、僕、嬉し過ぎてスキップしたい気分だよ。

　なのにさ……

　「行くぞ」

　長井さんたら、そんな僕の浮かれた気分に水を刺すんだから嫌になっちゃうよ。
　でも仕方ないよね、長井さんに置いてかれたら、僕ここからどうやって帰って良いか分かんないもん。

　「じゃ、じゃあ……、今日は本当にありがとうございました」

　僕は名残惜しさもかんじつつ、ＫＡＺＵにもう一度お礼を言うと、元々仏頂面を更に刺々しくさせる長井さんからリュックを受け取り、両手で抱きかかえた。

　「お疲れ様でしたぁ♪」

　国立監督やカメラマンさん、それとスタッフさん達に頭を一々下げ、ピンクとハートで飾られた部屋を後にした僕は、お部屋と同じくピンクの廊下を、フンワリスカートをヒラヒラ、金髪クルクルツインテールをユラユラさせ、お気に入りのフワモコブランケットを肩にかけ、長井さんの後をトボトボと着いて歩いた。

　でも、たまにすれ違うカップルには、きっと僕と長井さんは使用後・・・のカップルに見えてるのかな……、なんて馬鹿なことを考えてしまって、僕はエレベーターに乗り込んだ途端に吹き出してしまう。


　だってだよ？

　僕と長井さんだよ？
　ぜーったい、ありえないし！

　そりゃ長井さんだって見た目は悪くないよ？　寧ろかなり良い方だと思う。
　でもさ、僕の好みはもっとこう……

　背はそんなに高くなくても良いから、スマートで、ちょっぴり肩が頼りなくて……
　顔だって、そんなにワイルドじゃなくて良いから、凛々しくて……、でも笑うと可愛くて……

　でもって頭も良くて……って、これじゃ桜木くんじゃん？