H･I･M･E ーactressー

第８章 ｓｃｅｎｅ２：ハートのバスタブ

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　「ね、一枚だけ……、良いでしょ？」

　ＫＡＺＵが僕の手を握ったまま、カメラマンさんにお強請りをする。

　するとカメラマンさんは、ヒョイと肩を竦め……

　「仕方ないなぁ、他でもないＫＡＺＵの頼みだから、一枚だけだよ？」

　僕達の顔を交互に見ると、相原さんよりも下手くそなウィンクをした。

　「あ、でもその代わりと言っちゃなんだけど、可愛く撮れたらパッケージ用に使わせて貰うかもだけど、良いかな？」
　「ええ、勿論。良いわよね、ＨＩＭＥちゃん？」
　「え、う、うん……」

　本当は僕、一発撮りとかあんまり苦手なんだよね。
　エッチしてる時の一発撮りなら全然平気なんだけど、写真とか……一回しかないって思うと、緊張して顔引き攣っちゃうんだもん。


　でも相手がＫＡＺＵじゃ仕方ないよね？


　「そうだわ、ここにしましょ？」

　僕はＫＡＺＵに手を引かれるまま、背凭れがハート型になった天蓋付きの二人がけソファに腰を下ろした。
　僕の隣に、ＫＡＺＵもフワフワスカートが皺にならないように、ちょこんと座る。
　そしてお互いの腰と腰、胸と胸、それから頬と頬がピターッとくっつくように、身体を密着させた。

　「可愛く撮ってね？」
　「言われなくたって分かってるよ。なんたって俺、プロだからさ」

　カメラマンさんが自信満々で胸を叩く。
　
　「そうだわ、せっかくだからキスでもしちゃう？」
　「え……？」

　……って戸惑ってる間もなく、ＫＡＺＵのふっくらとした手が僕の顎にかかり、ＫＡＺＵの赤く薄い唇が、僕のピンク色の唇に、プチュッと音を立てて重なった。

　でも変なんだよね……。カメラマンさんがシャッターを切る気配が、一向に無い。


　どうしたんだろう……


　不思議に思って横目でチラッとカメラマンさんを見ると、その隙を狙ったかのように、ＫＡＺＵの舌先が僕の唇を割って、口の中へ入って来た。

　「ん……、ん……、ふっ……」


　ちょっと待って？
　僕、そんな話聞いてない……よ？