H･I･M･E ーactressー

第８章 ｓｃｅｎｅ２：ハートのバスタブ

９

　監督さんやカメラマンさん、スタッフさん達が出て行くのを待って、漸く僕達はピンク色したバスタブから出て、全身に着いた泡々をシャワーで流した。

　イチゴミルクの匂いがする泡々に包まれてると、僕自身がスイーツになれたような気がしてたから、ちょっぴり残念な気もしなくはないけど、このままでいるわけにもいかないし、仕方ないよね。

　あ、因みに僕の可愛い子・・・・は、国立監督の元気印の勢いに圧倒されて、呆気なく敗北宣言をした結果、今はしょんぼりとしている。

　「あ、そうだわ、さっきの話だけどね？」
　「アドレス交換の話し？」
　「そうそう、さっきはタイミング良くなのか、悪くなのか邪魔が入っちゃったじゃない？」


　あ、そっか……、あの時丁度長井さんが……


　「うん。でも、どうして僕が相原さんとアドレスの交換したことを？」
　「くく、知りたい？」

　うん、すっごく！

　だってあの時相原さん、僕とアドレスの交換したことは誰にも言わないって、ちゃんと約束だってしたのに、ＫＡＺＵが知ってるの変なんだもん。

　「あのね、実は私ね」

　ＫＡＺＵが僕を鏡の前に立たせ、僕の金髪クルクルツインテールをブラシで梳かしながら、キョロキョロっと周りを気にする。
　そして一瞬はにかんだように笑うと、僕の耳元に唇を寄せた。

　「私と相原さんね、付き合ってるのよ」


　ふーん、そっか……、それで相原さんが……
　ふーん、なるほどね……って、……え？


　「え、ええっ……!?」


　ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待って？
　相原さんとＫＡＺＵと付き合ってるなんて……僕聞いてないけど？


　「冗談……でしょ？　だって相原さん、そんなこと一言も……」


　たった一度共演したくらいで、そんな大事な事言うわけないって分かってるけど、でも恋人がいるとか、匂わせ的な事も無かった……よ？


　「それはだって私が口止めしてるからよ。だってあの人、いかにも口軽そうでしょ？」


　それは……、確かにそうだけども、それにしてもビックリだよ。