H･I･M･E ーactressー

第８章 ｓｃｅｎｅ２：ハートのバスタブ

６

 　「くく、ＨＩＭＥちゃんて、スイーツが好きなのね？」
　「うん、ＨＩＭＥスイーツ大好き♡」

　僕は泡々の中に腰まで身体を沈めると、両手で掬った泡にフーっと息を吹きかけた。
　すると、こんもりと塊だった泡が、小さな小さな泡になって舞い上がる。

　「ふふ、フワフワの綿雪みたい♪」　


　ね、そう思わない？
　ＫＡＺＵだってそう思うでしょ？


　僕が振り返ると、何故かＫＡＺＵがお腹を抱えてクスクス笑っていて……


　あれ？
　僕、何か変なこと言った？


　僕が頭の上に無数の？マークを浮かべ首を傾げると、まるでその時を狙っていたかの様に、カメラのレンズが僕に向けられた。

　「ＨＩＭＥちゃん、笑って笑って」
　「へ？　こ、こう……？」

　戸惑いながらも、カメラマンさんの要求に応えて、僕はカメラに笑顔を向けた。


　アイドル全開のどびっきり可愛い笑顔をね？


　「いいね～、ＨＩＭＥちゃん可愛いよ、すっごく可愛い」


　そ、そう？
　僕……、可愛い？

　ふふふ、嬉しいな♪


　「あ、そうだ、どうせだからＫＡＺＵちゃんも一緒に……、どうです、監督？」
　「お、それはナイスなアイディアだね」

　カメラマンさんの思いつきに、国立監督がノリノリで泡を手に掬う。


　ってゆーか、監督さん……、早く前閉めたら良いのに。
　元気印が風邪引くよ？


　「さ、ささ、ＫＡＺＵちゃん、お顔をこっちに向けてごらん？」
　「え、わ、私は良いわよ……。だって私、ＨＩＭＥちゃんみたく可愛くないもの……」
　「そんなことないよ、二人共同じくらい可愛いよ？　それに凄く美人だし。だから、ね？」
　「そ、そうかしら……」

　国立監督が手に掬った泡を、今度は指でちょっと掬い、ＫＡＺＵの鼻先にちょこんと乗せた。

　「何だか恥ずかしいわ……」

　ＫＡＺＵの頬が、ピンク色のタイルよりも、もっと濃いピンクに染まった。


　ふふ、照れたＫＡＺＵって、とっても可愛い♡

　……ってゆーか、ＫＡＺＵが僕を見て笑ってたのって、そーゆーこと？