H･I･M･E ーactressー

第４章 日常１：僕

４

　その後は……っていうか、自分に魔法をかけてからは、もぉ……

　「とても初めてとは思えない」と監督さんに言わせるくらい、僕はＨＩＭＥとしてカメラの前に立った……と言うよりは勃った・・・って言った方が正しいのかも？


　あ、因みに……なんだけど、僕その時が初めて・・・だったんだよね。


　カメラの前でエッチするのは勿論だけど、セックス自体が初めての経験だったんだ。
　一応ね、女の子とはしたことあるけど、自分から望んでそうなった訳じゃなくて、半ば強引にさせられちゃったもんだから、それが気持ち良いのかどうかも分からなくて……

　でも男の人とは初めてで……。それも僕が受け入れる側になるなんて、想像もしたことなかったから、正直ビックリしちゃったけどね？

　こんな所にこんなモノ挿れるんだ？
　こんなモノがこんな所に挿っちゃうんだ？、って。


　知識としては知ってたことだけど、実際目の当たり……って言うか、まさか経験することになるとは思ってなかったもん。


　だからすっごく痛かったし、苦しかったりもしたんだけど、でもその痛みを超えた先にある《快感》ってやつに、僕は気付いてしまったんだ。

　長井さん曰く、僕には元々そう言う資質みたいなのがあるらしく、加えて僕自身が気付いてしまった、見られることで興奮する性質とが合わさった結果、僕の中に隠れんぼをしていた人格「ＨＩＭＥ」が産まれた……んだと思う。

　結果、僕のデビュー作（しつこいようだけど、そんな大層なモンじゃない）は、数多あるアダルト……つまりＡＶと呼ばれる作品の中では異例の売れ行きを見せ、僕の名前は瞬く間に《そっちの世界》に広がった。
　僕……ＨＩＭＥは、一躍《そっちの世界》のアイドル的存在になった。

　（あ、《そっちの世界》ってのはつまり《ゲイの世界》ってことね）


　嬉しかったな。
　それまで誰からも褒められる経験が少なかった僕が、初めて人から認められたんだもん。

　そりゃさ、頑張ろうって思っちゃうよね。