H・I・M・E ーactressー

誠奈

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第2章  scene1:教室

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 「お待たせしました」

 新しい下着の上にバスローブを羽織ってシャワー室を出ると、相原さんがいつの間に着替えたのか、Tシャツにハーフパンツという、なんともラフな格好で廊下で足踏みをしていた。


 そっか、ろくに温まることもなくシャワー室から追い出す格好になっちゃったから……
 あ、もしかしたらお化けが怖い怖かったからとか?


 「ごめんなさい、寒かった……ですよね?」

 相原さんに申し訳なくて、僕は汚れた下着とフワモコバスタオルをギュッと抱き締めたまま、頭を下げた。敢えて「怖かったか」と聞かなかったのは、もし本当にお化けに怯えていたとしたら、余計に怖がらせてしまうことになるかも知れないと思ったから。

 「あ、ああ、全然気にしなくて大丈夫だから……」
 「でも……」

 僕のせいで相原さんが風邪でも引いたら……

 「それよりHIMEちゃんの方こそ、この後スチール撮影があるんだよね?」


 あ、そうだった!
 すっかり忘れてたけど、この後屋上でパッケージ用のスチール撮影があるんだった!


 「大変、急いでメイク直さないと……」

 メイクだけじゃない、着替えもスチール用の衣装に着替えなきゃいけないんだった。

 「あの僕……」
 「うん、先行って?
 「でも一人で大丈夫ですか?」
 「ま、まあ……、俺は今日はこれでもう上がりだし、大丈夫」

 そう言った相原さんの顔は、ほんのちょっぴりだけど強張ってるようにも見えるけど、相原さんが大丈夫って言うなら本当に大丈夫なんだろうな。

 「あ、あの、お疲れさまでした」
 「HIMEちゃんこそお疲れ様。あ、今度連絡しても良いかな? 仕事抜きで飯でも行こう」

 小指と親指を立てて、電話をかける仕草をする相原さん。それが妙におかしく見えるのは何故だろうね?

 「はい、勿論です。あ、でも……」
 「分かってるよ、セックスは抜きで……でしょ?」

 相原さんが両目をバチンとばかりに伏せる。


 ねぇ、それってもしかしてウィンクのつもり?
 全然出来てないけど?


 「じゃあ僕……」
 「うん、頑張って」
 「はい♪」

 僕は相原さんに再度深々と頭を下げると、スリッパ履きの足で階段を駆け上がった。途中、下の方で盛大なくしゃみをするのが聞こえたような気がしたけど、気にはしてられない。

 僕は駆け足で階段を昇りきると、僕専用の控え室にと用意された教室に駆け込んだ。
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