4 / 688
第1章 scene1:校舎
4
しおりを挟む
控え室として用意されたのは、スタジオセット(って程でもないけど……)が組まれた隣の教室で、まだ子供達の活気と笑い声に満ちていた頃の名残だろうか、窓辺に置かれた落書きだらけの机の上に、大きめの鏡と小型のスポットライト、ボックスティッシュがセットされている。
長いさんが言った通り、簡易的な物ではあるけど、これでも無いよりはましだ。
僕は早速メイクボックスを机の上に広げると、スポットライトのスイッチを入れ、鏡に向かった。
オールインワンタイプのクリームを手に取り、魔法をかけるように丁寧に肌に塗り込み、ベースが出来たらファンデーションを塗り、軽くチークを乗せたら、今度はアイメイクで目元を作って、最後にリップクリームの上からグロスを重ねる。
設定上、色は淡いピンク系で、あまり濃すぎないメイクだ。
一見面倒にも思える作業だけど、美大出身(中退だけど……)の僕にとっては、絵を描くのと同じ感覚だから、キャンバスが顔に変わっただけだと思えば、そう難しいことでもない。
「後はこれを被って、と……」
メイクボックスと一緒に持ち込んだケースの中から、地毛よりも若干明るめのウィッグを取り出し、ネットで纏めた頭に被る。
でも……
「うーん……、なんかしっくり来ないんだよな……」
胸元まで真っ直ぐに伸びた髪のせい?
僕は指で両サイドの髪を少し掬うと、後頭部の少し上らへんで無造作に纏めてからゴムで括り、淡いブルーのリボンを結んだ。
うん、これならどっちの衣装になっても大丈夫かも♪
鏡の中で何度か角度を変えながらメイクの最終チェックをしていると、教室のドアがノックされ、衣装を手にした長井さんが大股で僕に歩み寄って来るのが鏡に映り込んだ。
「衣装、そっちに決まったんだ?」
「まあな。俺はどっちかっつーと、もう一着の方が好みだったんだけどな?」
実は僕もそうだったりする。
「ふふ、仕方ないよ、それぞれ好みもあるだろうし……」
「確かにな。ま、取り敢えず着替えたら隣の教室に来てくれ」
僕は鏡越しに長瀬さんに向かって頷くと、長瀬さんが部屋から出て行くのを見送ってからバスローブの紐を解いた。
下着だけの格好になった僕は、長瀬さんが置いて行ったセーラー服を順に身に纏い、全身を写せる姿見の前に立った。そして鏡の中の自分に向かって魔法をかけた。
「僕はHIME……」と。
長いさんが言った通り、簡易的な物ではあるけど、これでも無いよりはましだ。
僕は早速メイクボックスを机の上に広げると、スポットライトのスイッチを入れ、鏡に向かった。
オールインワンタイプのクリームを手に取り、魔法をかけるように丁寧に肌に塗り込み、ベースが出来たらファンデーションを塗り、軽くチークを乗せたら、今度はアイメイクで目元を作って、最後にリップクリームの上からグロスを重ねる。
設定上、色は淡いピンク系で、あまり濃すぎないメイクだ。
一見面倒にも思える作業だけど、美大出身(中退だけど……)の僕にとっては、絵を描くのと同じ感覚だから、キャンバスが顔に変わっただけだと思えば、そう難しいことでもない。
「後はこれを被って、と……」
メイクボックスと一緒に持ち込んだケースの中から、地毛よりも若干明るめのウィッグを取り出し、ネットで纏めた頭に被る。
でも……
「うーん……、なんかしっくり来ないんだよな……」
胸元まで真っ直ぐに伸びた髪のせい?
僕は指で両サイドの髪を少し掬うと、後頭部の少し上らへんで無造作に纏めてからゴムで括り、淡いブルーのリボンを結んだ。
うん、これならどっちの衣装になっても大丈夫かも♪
鏡の中で何度か角度を変えながらメイクの最終チェックをしていると、教室のドアがノックされ、衣装を手にした長井さんが大股で僕に歩み寄って来るのが鏡に映り込んだ。
「衣装、そっちに決まったんだ?」
「まあな。俺はどっちかっつーと、もう一着の方が好みだったんだけどな?」
実は僕もそうだったりする。
「ふふ、仕方ないよ、それぞれ好みもあるだろうし……」
「確かにな。ま、取り敢えず着替えたら隣の教室に来てくれ」
僕は鏡越しに長瀬さんに向かって頷くと、長瀬さんが部屋から出て行くのを見送ってからバスローブの紐を解いた。
下着だけの格好になった僕は、長瀬さんが置いて行ったセーラー服を順に身に纏い、全身を写せる姿見の前に立った。そして鏡の中の自分に向かって魔法をかけた。
「僕はHIME……」と。
0
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる