視・束ーGaze to chaseー

誠奈

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 バイトが終わり、潤一と待ち合わせたコンビニへと走る……が、時間的にまだ早かったのか、外から店内を覗いてみても潤一の姿は見当たらない。


 仕方ない、中で待つか。
 外で待ってても良いけど、流石にこの寒さには勝てそうもない。


 俺はコンビニの中へと入ると、朝と同じように缶コーヒーだけを買って、イートインスペースの端っこに腰を下ろした。


 そうだ、一応連絡だけ入れておくか……


 俺はスマホを取り出すと、コンビニで待っていることを、潤一にメールで伝えた。

 でも、五分経っても十分待っても、俺が送ったメッセージの横に“既読”が付くことは一向になくて……


 ひょっとしてまだ仕事中……とか?

 だとしたら電話をかけても迷惑になるだろうし、電話に出る可能性だって低い。
 もう少し待っても連絡がなかったら、残念だけど先に帰るか。


 諦め半分でスマホをダウンのポケットに突っ込もうとした、丁度その時だった。

 俺のスマホが小さな電子音を響かせた。

 一度は仕舞いかけたスマホをもう一度出し、メッセージアプリを立ち上げると、さっきまで付いていなかった既読のマークが、今度はしっかり付いていて……

 潤一からの「ごめん」を意味するような、奇妙なイラストのスタンプまで添付されていた。

 俺は潤一に、「また今度」とだけメッセージを送ると、ダウンの前をしっかり閉めてから、コンビニを後にした。



 朝とは反対側のホームに立ち、地下鉄が来るのを待つ間、ふと思う。


 腹減ったな……

 潤一と一緒に飯を食うつもりでいたから、コンビニでも缶コーヒーだけで我慢したけど、こんなことなら弁当でも買って食えば良かった。


 今にも鳴りそうな腹をこっそり摩り、タイミング良く停まった地下鉄に乗り込んだ。

 流石に朝のようには混んではいないけど、会社帰りのサラリーマンで車内はそこそこ混みあっている。

 俺は丁度空いた席に腰を下ろすと、俄に重くなった瞼を閉じた。

 珍しく朝が早かったせいか、電車の揺れが酷く心地良くて、気付いた時には、俺は深い眠りの中にいた。


 アパートのある最寄りの駅名がアナウンスされるまで、ずっと……




 最寄り駅で地下鉄を降りた俺は、寝過ぎたせいかハッキリしない頭で改札を抜けると、思わず漏れそうになる大きな欠伸を噛み殺し、地上へと繋がる階段を登った。


 俺の足音に重なる、もう一つの足音にも気付くことなく……


 そうして漸く地上へと出た俺は、カフェの店長からの言伝を雅也に伝えるために、スマホをポケットから出した。
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