愛玩人形

誠奈

文字の大きさ
上 下
221 / 227
第13章   特別編「偏愛…」

57

しおりを挟む
 でも智翔は首を横に振り続けるばかりで……
 それどころか、僕が見ている目の前で、ペーパーナイフを自分の胸に向け構えている。

「駄目だ……、よすんだ……、良い子だから……、それを……」
「嫌よ……。お父さんを殺して私も死ぬの……」
「どう……して……」
「だって、そうでもしないとお父さんは私の物にはならないもの……」


 違う……!
 死んだって何も変わりやしないのに……

 僕達はどこまで行っても、血を分けた親子には違いないし、たった二人残った家族なのに……

 僕は偽ることなく智翔を愛しているのに、どうしてそんな哀しいことを……


「お父さんは私を愛してると言ったわ……。でもそれは、私の中にお母さんの姿を見ていたからなのよ……」


 どういう……ことだ……
 僕が、智翔に智子の姿を重ねていたと……、そう言いたいのか?


「現に、お父さんは覚えていないかもしれないけれど、私を抱きながら、何度も何度もお母さんの名前を呼んだわ……」


 嘘だ……、そんなことは決して……



 〝無い〟と断言出来たのなら、もしかしたら智翔の心は救われたのかもしれない。

 でも出来なかった。


 気付いてしまったから……

 智子のドレスを纏い、智子が好きだった青い繻子しゅすを髪に飾った智翔に、僕は何度智子の若かりし頃の姿を重ねただろうと……

 僕は智翔を愛していると言いながら、心の中ではやはり智子を求めていたのだと……

 気付いてしまったから……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

営業活動

むちむちボディ
BL
取引先の社長と秘密の関係になる話です。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

処理中です...