157 / 227
第12章 追葬…
6
しおりを挟む
町を離れて数年……
その間にすっかり様変わりしてしまった駅に降り立った僕達は、まず二木の元を尋ねた。
二木は突然の来訪に目を丸くしていたが、智子の後ろに隠れるようにしていた智翔を見るなり、その目を柔らかく細めた。
「智翔、この人はお父さんの友人でね、恩人でもあるんだよ?」
「恩人……?」
そう……、二木がいなかったら僕達は今頃どうなっていたことか……
二木がいたからこそ、僕達は最悪の決断をせずに済んだんだ。
「そうよ、さあ、ご挨拶なさい?」
智子に背中を押され一歩前に足を踏み出した智翔は、ワンピースの裾を指で摘んで、小さくお辞儀をした。
その姿に、二木の目尻が更に細くなる。
「やあ、これは参ったな。こんなに小さいのに、もうすっかりレディだ」
二木が智翔の頭をぽんと撫でると、智翔は途端に頬を膨らませ、
「あら、レディじゃなくてお姫様よ? 女の子はお姫様なのよ、ってお母さんいつも言ってるもの。そうよね、お母さん?」
同意を求めるように智子を見上げた。
「そうよ、女の子はいつだってお姫様よ?」
智子は小さく笑うと、智翔の目線の高さまで膝を折り、ふっくらとした頬を撫でた。
「智翔もお姫様よね?」
「ふふ、そうね。智翔は世界で一番可愛いお姫様だわ」
屈託のない智翔の笑顔に、それまで曇りがちだった智子の表情も、徐々に和らいでいくのを見て、僕は少しだけ胸が軽くなるのを感じた。
その間にすっかり様変わりしてしまった駅に降り立った僕達は、まず二木の元を尋ねた。
二木は突然の来訪に目を丸くしていたが、智子の後ろに隠れるようにしていた智翔を見るなり、その目を柔らかく細めた。
「智翔、この人はお父さんの友人でね、恩人でもあるんだよ?」
「恩人……?」
そう……、二木がいなかったら僕達は今頃どうなっていたことか……
二木がいたからこそ、僕達は最悪の決断をせずに済んだんだ。
「そうよ、さあ、ご挨拶なさい?」
智子に背中を押され一歩前に足を踏み出した智翔は、ワンピースの裾を指で摘んで、小さくお辞儀をした。
その姿に、二木の目尻が更に細くなる。
「やあ、これは参ったな。こんなに小さいのに、もうすっかりレディだ」
二木が智翔の頭をぽんと撫でると、智翔は途端に頬を膨らませ、
「あら、レディじゃなくてお姫様よ? 女の子はお姫様なのよ、ってお母さんいつも言ってるもの。そうよね、お母さん?」
同意を求めるように智子を見上げた。
「そうよ、女の子はいつだってお姫様よ?」
智子は小さく笑うと、智翔の目線の高さまで膝を折り、ふっくらとした頬を撫でた。
「智翔もお姫様よね?」
「ふふ、そうね。智翔は世界で一番可愛いお姫様だわ」
屈託のない智翔の笑顔に、それまで曇りがちだった智子の表情も、徐々に和らいでいくのを見て、僕は少しだけ胸が軽くなるのを感じた。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。



極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
そして悲しみは夜を穿つ
夜野綾
BL
炎の海で踊れ、心臓の鼓動を槌音に変え、夜の底さえ打ち砕け。近未来、戦争で荒廃した東京。熾烈な権力抗争の中で、男たちの愛と復讐が始まる。
---------------
壊滅した都心の周辺で、行き場をなくした男たちは蠢いている。復興事業やフィルターマスク専売権、支援物資の分配を巡り、武装組織が権力抗争を繰り広げる東京。鎌田で食堂と周辺コミュニティを細々と仕切っていた怜(れん)の元へ、ひとりの男が現れる。彼は、かつて怜が愛した男の匂いをまとっていた。得体の知れないその男は、怜にある取引をもちかける──
むにゃむにゃがある章は★。
ハードボイルド・サスペンスBL。ハッピーエンド。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる