136 / 227
第11章 信愛…
7
しおりを挟む
辺りが茜色に染まりかけた頃、僕達は漸く潤一の生家に着いた。
予定よりも随分到着の遅くなったのを案じてか、潤一の両親は玄関と門との間を何度も往復していた。
「長旅でお疲れだろう……。こっちへ来て一休みするといい」
「まあまあ、智子ちゃん、身体はきつくない?」
潤一の両親は僕達を暖かく出迎えてくれた。
「ええ、大丈夫よ? それよりおばさま、智子とってもお腹が空いたわ」
「こ、こら、智子……」
挨拶もろくに済まさない内から空腹を訴える智子に、僕は内心焦りを感じてしまう。
数ヵ月前まで、何不自由なく暮らしてきたのだから、仕方のないことなんだろうけど、無邪気な我儘がいつまでもまかり通る筈なんてないから……
でも潤一の両親は智子を一切咎めることなく、
「そうかいそうかい、じゃあすぐに夕飯にしましょうね」
人の良さそうな笑顔を浮かべて、智子を家の中へと招き入れた。
「すみません、失礼をしてしまって……」
僕は潤一に智子の非礼を詫びた。
「気にすることはないよ。これまで年寄り二人きりで暮らしてきたからね。君たちが来てくれたことが嬉しいんだよ」
潤一は僕の手から荷物を取り上げると、代わりに馬車の中に置き去りにされていた花束を渡して寄越した。
「あっ、智子ったら……」
「贈り物を忘れる程腹が減っていた、ってことだろ?」
「はあ……、何だか先が思いやられます……」
僕はがくりと肩を落とした。
予定よりも随分到着の遅くなったのを案じてか、潤一の両親は玄関と門との間を何度も往復していた。
「長旅でお疲れだろう……。こっちへ来て一休みするといい」
「まあまあ、智子ちゃん、身体はきつくない?」
潤一の両親は僕達を暖かく出迎えてくれた。
「ええ、大丈夫よ? それよりおばさま、智子とってもお腹が空いたわ」
「こ、こら、智子……」
挨拶もろくに済まさない内から空腹を訴える智子に、僕は内心焦りを感じてしまう。
数ヵ月前まで、何不自由なく暮らしてきたのだから、仕方のないことなんだろうけど、無邪気な我儘がいつまでもまかり通る筈なんてないから……
でも潤一の両親は智子を一切咎めることなく、
「そうかいそうかい、じゃあすぐに夕飯にしましょうね」
人の良さそうな笑顔を浮かべて、智子を家の中へと招き入れた。
「すみません、失礼をしてしまって……」
僕は潤一に智子の非礼を詫びた。
「気にすることはないよ。これまで年寄り二人きりで暮らしてきたからね。君たちが来てくれたことが嬉しいんだよ」
潤一は僕の手から荷物を取り上げると、代わりに馬車の中に置き去りにされていた花束を渡して寄越した。
「あっ、智子ったら……」
「贈り物を忘れる程腹が減っていた、ってことだろ?」
「はあ……、何だか先が思いやられます……」
僕はがくりと肩を落とした。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説




サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる