愛玩人形

誠奈

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第10章   傀儡…

13

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 ちりりと小さな痛みを感じて、僕は顔を顰めたが、それでも僕は握った手を緩めることはしなかった。

 堕ちればいい、地獄へ……
 そして智子の無垢な心と身体を穢した罰を受けるがいい……

 でも父様、その時は僕も一緒に逝くから……
 決して許されることのない禁忌を犯した罰を、僕も一緒に受けるから……


 僕は閉じていた瞼をかっと見開き、奥歯をぎりりと噛んだ。

 その時、不意に僕の視界に、まるで雲がかかったような影が出来、ずしりとした重みが僕の上にのしかかった。

「父……様……? 父さ……!」

 父様の手からペーパーナイフが滑り落ち、僕の耳の横でからりと音を立てた。

「あなたがいけないのよ……? あなたが私を愛してくれないから……。あなたが……」

 僕に覆い被さるようにして倒れ込んだ父様の下から這い出て、声のした方に目を向ける。


 母……様……?


 血の気を失くした顔に薄く笑を浮かべ、ゆらりと立ち上がった母様の手は真っ赤に染まっていて、その手には同じように赤に染まった包丁が握られていた。

「母様っ……!」

 僕は力を失くした父様の身体を上向かせると、その口元に手を翳した。

 でも一向に息が触れることはなく……

「死んで……る……?」

 良く見ると、元々は玉虫色だった筈の着物の胸の部分が、どす黒く染まっていて、そこから溢れた赤い液体が床をも赤黒く染めていた。

「なんてことをっ……」

 潤一が僕を押しのけて、手首、そして首筋に指を宛てがった。
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