96 / 227
第8章 慕情…
12
しおりを挟む
『兄さま……、愛しい兄さま……。
兄さまに会いたい…。
兄さま、智子は兄さまを心からお慕いしています。
だから……だから、早く智子を迎えに来て。
兄さまに会いたい……』
ああ……、智子……!
僕だって出来ることならば、今すぐにでも智子の元へ駆けて行って、その愛らしい頬に、髪に……、唇に触れたい。
智子を取り巻く全ての物から、君を奪い去ってしまいたい!
そしてその小さな肩を、この腕で抱きしめてやりたい。
でも今の僕には、父様に立ち向かう勇気もなければ、力もない。
どうか……どうか、頼りない僕を許しておくれ……
智子を悲しませる僕を、どうか許して……
僕は智子の書いた、花のように愛らしい文字を一つ一つ指でなぞり、そして便せんの片隅に残った涙の跡に口付けを一つ落とした。
智子、待っていておくれ。
僕は必ず君を攫いに行くから……、それまでどうか……
届くことのない誓いを立てながら……
僕はその晩、智子の甘い香りが染み付いた便箋を枕元に置き、床についた。
例え目が覚めた瞬間に消え去ってしまう幻だとしても、智子に会えるのなら……
愛しい智子をこの腕に抱くことが出来るのなら、それが例え幻であったとしても構わない。
会うことが叶わないのならば、せめて夢の中だけでも……、僕は強く願った。
智子の身に予期せぬ事態が起きているとも知らずに……
兄さまに会いたい…。
兄さま、智子は兄さまを心からお慕いしています。
だから……だから、早く智子を迎えに来て。
兄さまに会いたい……』
ああ……、智子……!
僕だって出来ることならば、今すぐにでも智子の元へ駆けて行って、その愛らしい頬に、髪に……、唇に触れたい。
智子を取り巻く全ての物から、君を奪い去ってしまいたい!
そしてその小さな肩を、この腕で抱きしめてやりたい。
でも今の僕には、父様に立ち向かう勇気もなければ、力もない。
どうか……どうか、頼りない僕を許しておくれ……
智子を悲しませる僕を、どうか許して……
僕は智子の書いた、花のように愛らしい文字を一つ一つ指でなぞり、そして便せんの片隅に残った涙の跡に口付けを一つ落とした。
智子、待っていておくれ。
僕は必ず君を攫いに行くから……、それまでどうか……
届くことのない誓いを立てながら……
僕はその晩、智子の甘い香りが染み付いた便箋を枕元に置き、床についた。
例え目が覚めた瞬間に消え去ってしまう幻だとしても、智子に会えるのなら……
愛しい智子をこの腕に抱くことが出来るのなら、それが例え幻であったとしても構わない。
会うことが叶わないのならば、せめて夢の中だけでも……、僕は強く願った。
智子の身に予期せぬ事態が起きているとも知らずに……
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。


寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる