88 / 227
第8章 慕情…
4
しおりを挟む
沈黙が流れ、ただ時間だけが無情に過ぎて行った。
それでも僕の考えは未だ定まらないままで……
「俺は一旦家に帰るが、お前はどうする?」
二木君が身体を起こし言うが、聞かれところで僕にはここで以外に行く宛てがあるわけでもなく、手持ちの金だって数日もすれば底をつく程度だ。
二木君に迷惑をかけるのは本意ではないが、ここはやはり二木君に頼る他術はないだろう。
「暫くここにいてもいいだろうか?」
「俺は別に構わなんよ。ほとぼりが冷めるまでいればいいさ」
「……助かるよ」
ほとぼりが冷めるまで……か。
果たしてそんな日が来るのだろうか……
母様の、あの逼迫した表情を思い出すだけで、不安が過ぎる。
でも今は母様の言葉を信じるしかない。
一人になった薄暗い部屋で、僕は布団を頭から被り、深い眠りに付いた。
それから数日の間、僕は部屋から一歩も出ることなく、まるで息を潜めるようにして時を過ごした。
その間、母様からの連絡は一切なく、僕は寄せては返す不安の波に胸を押し潰されそうになっていた。
智子はどうしているだろうか……
柔らかな頬を涙で濡らしてはいないだろうか……
会いたいよ、智子。
君のその小さな身体を、この腕で抱き締めたい。
智子のことを思うだけで、胸が張り裂ける程に痛み、気付けば、毎夜のように枕を涙で濡らしていた。
そんな時だった、部屋の扉を誰かが叩いた。
それでも僕の考えは未だ定まらないままで……
「俺は一旦家に帰るが、お前はどうする?」
二木君が身体を起こし言うが、聞かれところで僕にはここで以外に行く宛てがあるわけでもなく、手持ちの金だって数日もすれば底をつく程度だ。
二木君に迷惑をかけるのは本意ではないが、ここはやはり二木君に頼る他術はないだろう。
「暫くここにいてもいいだろうか?」
「俺は別に構わなんよ。ほとぼりが冷めるまでいればいいさ」
「……助かるよ」
ほとぼりが冷めるまで……か。
果たしてそんな日が来るのだろうか……
母様の、あの逼迫した表情を思い出すだけで、不安が過ぎる。
でも今は母様の言葉を信じるしかない。
一人になった薄暗い部屋で、僕は布団を頭から被り、深い眠りに付いた。
それから数日の間、僕は部屋から一歩も出ることなく、まるで息を潜めるようにして時を過ごした。
その間、母様からの連絡は一切なく、僕は寄せては返す不安の波に胸を押し潰されそうになっていた。
智子はどうしているだろうか……
柔らかな頬を涙で濡らしてはいないだろうか……
会いたいよ、智子。
君のその小さな身体を、この腕で抱き締めたい。
智子のことを思うだけで、胸が張り裂ける程に痛み、気付けば、毎夜のように枕を涙で濡らしていた。
そんな時だった、部屋の扉を誰かが叩いた。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
騎士団寮のシングルマザー
古森きり
恋愛
夫と離婚し、実家へ帰る駅への道。
突然突っ込んできた車に死を覚悟した歩美。
しかし、目を覚ますとそこは森の中。
異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、歩美の奮闘が今、始まる!
……と、意気込んだものの全く家事が出来ない歩美の明日はどっちだ!?
※ノベルアップ+様(読み直し改稿ナッシング先行公開)にも掲載しましたが、カクヨムさん(は改稿・完結済みです)、小説家になろうさん、アルファポリスさんは改稿したものを掲載しています。
※割と鬱展開多いのでご注意ください。作者はあんまり鬱展開だと思ってませんけども。
我らの輝かしきとき ~拝啓、坂の上から~
城闕崇華研究所(呼称は「えねこ」でヨロ
歴史・時代
講和内容の骨子は、以下の通りである。
一、日本の朝鮮半島に於ける優越権を認める。
二、日露両国の軍隊は、鉄道警備隊を除いて満州から撤退する。
三、ロシアは樺太を永久に日本へ譲渡する。
四、ロシアは東清鉄道の内、旅順-長春間の南満洲支線と、付属地の炭鉱の租借権を日本へ譲渡する。
五、ロシアは関東州(旅順・大連を含む遼東半島南端部)の租借権を日本へ譲渡する。
六、ロシアは沿海州沿岸の漁業権を日本人に与える。
そして、1907年7月30日のことである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる