愛玩人形

誠奈

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第7章   哀傷…

16

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 僕は自室に駆け戻ると、すぐ様下衣をずり下ろした。
 そして痛みばかりが増す膨らみに手を添えると、智子のあの小さな乳房の柔らかな感触を思いだしながら、無心で自慰に耽った。

 「智……子、ああ、智子……っ……」


 何度も愛しい人の名を呼びながら……


 静かに開かれた扉の隙間から、智子が見ているのにも気付かずに……




 思いの丈を吐き出した僕は、洗面用に用意された桶の中で汚れた手を洗い、下衣を纏った。

 そして乱れた息を整えると、再び智子の部屋の扉を叩いた。

 「智子、僕だよ? 入ってもいいかい?」

 声をかけ、そっと扉を開く。
 すると真っ赤なドレスを纏い、窓辺に佇んでいた智子が、弾かれたように僕を振り返った。

 そこにはついさっきまで見せていた、あの無垢な姿はどこにもなくて、ただただ妖艶さを纏った、娼婦のような女が立っていた。

 「智……子?」

 名前を呼びながら歩み寄ると、智子はくすりと笑って、小さな肩を揺らした。

 「ど、どうしたんだい、そんな風に笑うなんて……。それにそんな格好、智子らしくないよ」
 「あら、ごめんなさい? 智子、あんまり驚いてしまって……」
 「何が……だい?」
 「ふふ、だって兄さまったら、智子の名前を呼びながら、ふふふ……」


 見られていた!
 僕は最も恥ずべき行為を、一番見られたくない智子に見られていたんだ。


 僕は羞恥に赤く染まる顔を隠そうと、咄嗟に顔を俯かせた。
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