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第4章 迷夢…
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「や、止めて下さい!」
僕は女性の襟元から手を引き抜いた。
僕だって男だ、女性の身体に全く興味がないわけじゃない。でも、指先に感じる豊満な乳房の柔らかさは、僕に途轍もない嫌悪感を抱かせた。
これがもし智子の身体だったら……、もしかしたら違っていたのだろうか。
ふと許されない想像が脳裏をよぎったその時だった。
「おい、俺の客に手ぇ出すんじゃないよ」
小さな丸テーブルの上に乱暴に珈琲の入ったカップを置き、銀盆を脇に挟んだ二木君が、微笑とも嘲笑いとも区別のつかない何とも複雑な顔をして女性を見おろしていた。
「何よ、退屈そうにしてたから、話相手でもしてやろうかと思っただけじゃないか。 ねえ?」
背けた顔を、赤い爪で飾った手が引き戻す。
「あ、あの、僕は……」
僕は顎を掴まれたまま、縋るように二木君を見上げた。
「ほら、困ってるだろ? それになあ、こいつぁ、お前みたいな女が気安く触れるような、そんな安い奴じゃないんだ。分かったら、とっとと失せな」
「分かったよ。全く、なんだってんだい……」
二木君の僅かに怒気を含んだ声に気圧されてか、女性は一つ舌打ちをしてから吐き捨てるように言うと、その濃い化粧の顔を僕の耳元に近付け、煙草の匂いのする息をフッと吹きかけた。
「遊びたくなったらまたおいで? いつでも相手して上げるから」
そして色を含んだ声色で囁くと、高笑いをしながらその場を去って行った。
「全く困ったもんだよ。金持ってそうな男と見りゃ、年なんか関係なく擦り寄ってくんだからな。阿婆擦れ女が……」
そう言った二木君の顔は、まるで汚らしい物でもみるような、苦々しくも険しい表情だった。
僕は女性の襟元から手を引き抜いた。
僕だって男だ、女性の身体に全く興味がないわけじゃない。でも、指先に感じる豊満な乳房の柔らかさは、僕に途轍もない嫌悪感を抱かせた。
これがもし智子の身体だったら……、もしかしたら違っていたのだろうか。
ふと許されない想像が脳裏をよぎったその時だった。
「おい、俺の客に手ぇ出すんじゃないよ」
小さな丸テーブルの上に乱暴に珈琲の入ったカップを置き、銀盆を脇に挟んだ二木君が、微笑とも嘲笑いとも区別のつかない何とも複雑な顔をして女性を見おろしていた。
「何よ、退屈そうにしてたから、話相手でもしてやろうかと思っただけじゃないか。 ねえ?」
背けた顔を、赤い爪で飾った手が引き戻す。
「あ、あの、僕は……」
僕は顎を掴まれたまま、縋るように二木君を見上げた。
「ほら、困ってるだろ? それになあ、こいつぁ、お前みたいな女が気安く触れるような、そんな安い奴じゃないんだ。分かったら、とっとと失せな」
「分かったよ。全く、なんだってんだい……」
二木君の僅かに怒気を含んだ声に気圧されてか、女性は一つ舌打ちをしてから吐き捨てるように言うと、その濃い化粧の顔を僕の耳元に近付け、煙草の匂いのする息をフッと吹きかけた。
「遊びたくなったらまたおいで? いつでも相手して上げるから」
そして色を含んだ声色で囁くと、高笑いをしながらその場を去って行った。
「全く困ったもんだよ。金持ってそうな男と見りゃ、年なんか関係なく擦り寄ってくんだからな。阿婆擦れ女が……」
そう言った二木君の顔は、まるで汚らしい物でもみるような、苦々しくも険しい表情だった。
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