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第1章 義妹…
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僕は智子をとても可愛がった。
父様に言われたからじゃない。初めて出来た妹の存在が、とても嬉しかったからだ。
母様はそんな僕を咎めこそしなかったが、智子の存在を疎ましく思っているのは、その態度からも容易に見て取れた。
智子はいつも、僕が学校から帰るのを、玄関脇の階段の一番下に座って待っていた。そして僕が玄関扉を開けると同時に、まるで跳ねるように僕に駆け寄っては、ふわりとした笑顔で僕を見上げた。
「お帰りなさい、兄たま」
僕は智子にそう言って貰えるのが、少しむず痒く感じながらも、嬉しくて堪らなかった。そう、智子が来る前までは、照以外僕を出迎えてくれる人なんていなかったから。
「ただいま、智子」
僕がそう言うと、智子はまるで抱っこをせがむように、僕に向かって両手を伸ばしてくる。でも僕の手は学生鞄やら、脱いだ外套やらでで塞がっていて……
「駄目だよ、智子。まずは鞄を部屋に置いて、着替えを済ませてからじゃないと? それに、《兄たま》じゃなくて《兄さま》だからね?」
十を過ぎようとしているのに、中々に舌足らずな智子の口調をやんわりと咎めると、途端に剥れ顔になる智子。
僕はそんな智子が可愛くて仕方なかった。《兄たま》と呼ばれることだって、口ではそう言っても、本当はそう呼ばれるのが好きだった。
「こら、そんな顔をしていては可愛いお顔が台無しだよ?」
僕は指を咥えて膨れる智子の手を取ると、手を繋いで階段を上った。そして僕の部屋の前まで来ると、しっかりと指を絡めてくる智子の手をそっと解いた。
「着替えを済ませたら本を読んで上げるから、少しだけここで待ってて?」
「少しだけ?」
「うん、すぐだから」
繋いでいた手が離れた途端、再び指を咥え始めた智子に言い付け、僕は自室へと入った。
いくら幼い兄妹とはいえ、僕達は男子と女子であって、無闇に部屋へと入ることは、母様から固く禁じられていた。
その理由こそ分からないが、僕も智子も、母様からの言い付けだけは守っていた。
ずっと……
父様に言われたからじゃない。初めて出来た妹の存在が、とても嬉しかったからだ。
母様はそんな僕を咎めこそしなかったが、智子の存在を疎ましく思っているのは、その態度からも容易に見て取れた。
智子はいつも、僕が学校から帰るのを、玄関脇の階段の一番下に座って待っていた。そして僕が玄関扉を開けると同時に、まるで跳ねるように僕に駆け寄っては、ふわりとした笑顔で僕を見上げた。
「お帰りなさい、兄たま」
僕は智子にそう言って貰えるのが、少しむず痒く感じながらも、嬉しくて堪らなかった。そう、智子が来る前までは、照以外僕を出迎えてくれる人なんていなかったから。
「ただいま、智子」
僕がそう言うと、智子はまるで抱っこをせがむように、僕に向かって両手を伸ばしてくる。でも僕の手は学生鞄やら、脱いだ外套やらでで塞がっていて……
「駄目だよ、智子。まずは鞄を部屋に置いて、着替えを済ませてからじゃないと? それに、《兄たま》じゃなくて《兄さま》だからね?」
十を過ぎようとしているのに、中々に舌足らずな智子の口調をやんわりと咎めると、途端に剥れ顔になる智子。
僕はそんな智子が可愛くて仕方なかった。《兄たま》と呼ばれることだって、口ではそう言っても、本当はそう呼ばれるのが好きだった。
「こら、そんな顔をしていては可愛いお顔が台無しだよ?」
僕は指を咥えて膨れる智子の手を取ると、手を繋いで階段を上った。そして僕の部屋の前まで来ると、しっかりと指を絡めてくる智子の手をそっと解いた。
「着替えを済ませたら本を読んで上げるから、少しだけここで待ってて?」
「少しだけ?」
「うん、すぐだから」
繋いでいた手が離れた途端、再び指を咥え始めた智子に言い付け、僕は自室へと入った。
いくら幼い兄妹とはいえ、僕達は男子と女子であって、無闇に部屋へと入ることは、母様から固く禁じられていた。
その理由こそ分からないが、僕も智子も、母様からの言い付けだけは守っていた。
ずっと……
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