S/T/R/I/P/P/E/R ー踊り子ー

誠奈

文字の大きさ
上 下
368 / 369
第27章    All for you

24

しおりを挟む
 「わ、分かった……、言うから……、ちゃんと言うから、だから……」


 本当に俺から離れて逝こうとなんて、しないでくれ……


 俺は一回り小さくなった翔真を背中から抱き竦め、相変わらず撫でた肩に顔を埋めた。

 心臓の音まで聞こえるんじゃないかってくらいに身体を密着させ、

 「愛……してる……」

 まるで蚊の鳴くような声で、翔真の耳元に囁いた。

 「愛してる、翔真。愛してる……、愛して……」

 何度も何度も……、声が涙に染まるまで、何度もただ一言だけを繰り返した。

 その間、翔真は頷くことも、俺の言葉に答えることもせず、ただじっと俺の声に耳を傾けていた。


 それが俺の不安を煽ることを知っていながら……


 「なあ……、何か言ってくれよ……」


 お前の……翔真の心が聞きたい、聞かせて欲しい!


 精一杯の願いを込めて、俺は翔真の胸に回した腕に力をこめた。
 痩せた翔真の身体が折れてしまうくらいに、強く……

 その時、

 「馬鹿だな……お前。俺がどんだけお前のその一言を待ってたか……。遅ぇんだよ、ったく……」

 ポツリ……と、俺の手の甲を熱い雫が濡らした。


 翔真が……泣いてる?


 いつだって俺に弱さを見せたことの無い翔真が……、肩を揺らし、声を殺して、泣いている。


 それだけでもう何もいらなかった。


 愛してる……
 翔真の心が、全身が、そのたった一言を命懸けで伝えてくれてるのが分かったから……


 もうそれ以上は何もいらなかった。







 それから暫くの間、翔真と二人小さなベッドに横になり、カーテンを開け放った窓から見える月を眺めていた。

 言葉を交わさない代わりに、何度もキスを交わし、その体温を……、その存在を確かめるかのように、指を絡め合い、手を握り合った。


 そう……

 「いや~、どうだった? ビックリした?」

 今世紀最大級の超ド天然男が、穏やかな時間をぶっ壊した、その時までは……

 当然だけど、全ての恨みをこめたパンチは、見事雅也の腹に見事命中し、雅也は涙目になってその場に蹲った。

 一緒にいた和人は、「当然の結果だね」と、雅也を仁王立ちで見下ろした。

 俺も、そして翔真も、それには流石に腹を抱えて笑った。


 とても穏やか……とは言えないけれど、その時間が……幸せに満ち溢れたその一時が、俺の心に刺さっていた無数の棘を溶かして行くような……、そんな時間だった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

機械に吊るされ男は容赦無く弄ばれる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

少年探偵は恥部を徹底的に調べあげられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

不良少年達は体育教師を無慈悲に弄ぶ

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

処理中です...