S/T/R/I/P/P/E/R ー踊り子ー

誠奈

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第27章    All for you

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 俺と柊真には、ドラッグに溺れた過去以外に、もう一つの共通点があった。

 環境は違うけど、俺も……そして柊真も、ダンスの経験があった、ってことだ。
 ただ、お互い薬物依存の後遺症なのかなんなのか、以前の様には踊ることはとても出来なくて……

 俺に至っては、後遺症だか何だか知らないが、自分の身体なのにまるで思い通りに動かすこともままならない状態で。
 以前はあんなに簡単に踏めた筈のステップも、足が縺れて上手く踏めずに、挙句ひっくり返ってしまうことが何度もあった。


 でも本能……なんだろうな、下手くそなダンスでも、踊ることが凄く楽しくて……


 俺と柊真はお互いに持ち寄った曲を流しては、汗を流した。

 忘れた頃に襲い来るフラッシュバックの恐怖と、薬へのどうしようもない渇望も、柊真と踊ることでなんとかやり過ごすことが出来た。

 踊ることが、まだ踊れることが、こんなにも幸せだったなんて、俺はすっかり忘れていたんだ。


 もう一度踊りたい。
 出来ることなら、許されるのであれば、もう一度目も眩むようなスポットライトの光の下で踊りたい。


 ダルクで、薬とは無縁の生活をしながら、俺はいつしかダンスへの情熱が再燃するのを感じていた。

 でもそれは到底叶うわけがない、もうダンサーとしてステージに立つことなんて、例え周りの人間が許したとしても、アイツは……俺のために死んだ翔真は、絶対に許さないだろうと、そう思っていた。


 それが、翔真を殺した俺への罰なんだと。


 でも柊真は言ったんだ。

 「俺がもし智樹の恋人だった翔真だったとしたら、俺は智樹には踊り続けて欲しいと思うな」って。


 お前に翔真の何が分かるんだ。


 本当はそう言ってやりたかった。
 でも普段馬鹿ばっか言ってる柊真が、この時ばかりは真剣で……

 「俺さ、今までダンスだけは誰にも負けたことないって思ってたけどさ、智樹は別。俺、智樹がステージで踊るの見てみたい」
 「……んな、簡単に言うなよ」

 単純なステップすらまともに踏めないのに、ステージなんて立てるわけが無い。

 「無理だよ、俺なんて」

 俺がどれだけ戻りたいと願ったところで、俺はもうダンサーには戻れない。

 だから叶えられそうもない夢なんて、見ない方が良い。


 傷つくだけだから……
 もう、俺のせいで誰も傷ついて欲しくないから……
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