S/T/R/I/P/P/E/R ー踊り子ー

誠奈

文字の大きさ
上 下
333 / 369
第26章   Missing heart 

11

しおりを挟む
 路肩に車を停め、スマホを手に取った。

 「もしもし……」

 しようとすれば無視することも出来た。
 でもあえてそうしなかったのは、佐藤にだけは本当のことを打ち明けておきたかったから。
 場合によっては、佐藤の手を借りることになる可能性も含めて、のことだ。
 尤も、本気で佐藤の手を借りるつもりなんて、俺にはこれっぽちもねぇけど、相手が相手なだけにある程度の保険は掛けておきたい。


 そう思って電話には出たんだが……


 佐藤から返って来たのは意外な言葉で……
 まさかこのタイミングで雅也が和人に電話をかけるとは、正直思ってもなかった。

 ただチワワのことを頼みたくてかけた電話が、雅也に不安を与えることになったなんて、とんだ計算違いではあったけど、却って手間が省けたと思えば、雅也には申し訳ないが、儲けモンってことか……

 それにずっと気にかかっていた雅也と和人の関係も、これを機に少しは前進してくれるなら、それはそれで俺も肩の荷が下ろせるってもんだ。

 「それで、佐藤さんに頼みたいことが……」




 俺は佐藤に、松下から聞いた智樹に関する情報を、包み隠すことなくすべて話した。
 佐藤は終始黙ったままで俺の話を聞き終えた後、「分かった」と、小さく呟くと……

 「但し、無茶だけはするなよ? 君にもしもの事があれば、悲しむのは智樹だからな?」

 そう言って、息を一つ吐き出した。

 「分かってます」

 恐らく佐藤は、これから俺が対峙しようとしている相手の恐ろしさを知っていて、その上での忠告なんだと思う。
 俺なんかよりも、うんと多くの場数を踏んで来た人間だ、その佐藤が言うんだ、素直に従うしかない。

 「それから、奴の滞在しているホテルだが、ちょっとばかり伝があってね。俺から連絡を入れておくから、着いたらフロントの植木と言う男を尋ねなさい。彼が手を貸してくれる筈だから」
 「いや、でもそれじゃ貴方に迷惑が……」
 「何、気にすることはないさ。それに俺もあの子のことは今でも大切に思っているからね」

 そう言ったきり、佐藤は口を噤んだ。
 きっとまだ佐藤の心の中には、智樹の存在が色濃く残っているんだろう……

 「分かりました、尋ねてみます。お心遣い感謝します」


 必ず智樹を連れて帰るから……


 俺は胸の中で何度目かの決意をしてから、佐藤との電話を切った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

機械に吊るされ男は容赦無く弄ばれる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

少年探偵は恥部を徹底的に調べあげられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

不良少年達は体育教師を無慈悲に弄ぶ

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...