328 / 369
第26章 Missing heart
6
しおりを挟む
再び訪れた沈黙の時間……
でもそれはそう長くは続かなかった。
松下はそれまで固く結んでいた手を解き、目にかかる程伸びた前髪を掻き上げた。
「智樹があの事故の後行方不明になっていたことは、高校時代の同級生とのSNSを通じて知った。勿論、ソイツも俺は死んだもんだと思い込んでたから、最初は驚かれたけどな……」
そりゃそうだ、死んだと思っていた人間が、実は生きてたなんて……、それこそ狐にでも摘まれたような気分だったに違いない。
現にこの俺がそうだったんだから。
「それで? 智樹が行方不明になっていると知らされて、その後は?」
「ネット上に、ダンスに関する情報を、自由に書き込める掲示板があるのを知ってるか?」
「ああ、それなら……」
確か以前智樹と一緒に見たことがある。
ダンススクールの宣伝か、若しくはテレビでも良く目にするようなダンスグループについての書き込みが殆どだったが、中にはプロを目指すストリートダンサーの投稿動画なんかもあったりして、智樹は興味深げに動画を見ていた。
「その掲示板が智樹と何の関係が?」
俺が見た限りでは、そこに智樹の動画はアップされていなかったし、智樹自身高校時代に無料動画サイトに投稿したきり、動画の投稿は一切していない筈だ。
なのにそこに智樹に繋がる手掛かりがあるとは、到底思えない。
「あったんだよ、そこに智樹の名前が、アンタの劇場の名前と一緒にね……」
「えっ?」
確かにインターネットやSNSがこれだけ普及している時代だから、可能性ゼロではないが、それでも……だ。
「勿論、それが俺の探している智樹であるって保証はないし、もしかしたら人違いかもしれないって思ったよ? でも不思議なんだよな、そん時の俺には変な確信みたいなもんがあってさ……」
自嘲気味に笑って、松下は長い睫毛に縁取られた瞼をそっと伏せた。
そして次に瞼が開かれた時、その目は過ぎ去った過去に思いを馳せるような、そんな遠い目をしていた。
「俺は藁をも掴む思いでアンタの劇場のホームページを開いた。そしたらさ、いたんだよ、アイツが……。それもダンサーとしてね」
ストリップってのには驚いたけど……
そう言って松下は初めて俺の目の前で、とても穏やかな優しい笑顔を浮かべた。
でもそれはそう長くは続かなかった。
松下はそれまで固く結んでいた手を解き、目にかかる程伸びた前髪を掻き上げた。
「智樹があの事故の後行方不明になっていたことは、高校時代の同級生とのSNSを通じて知った。勿論、ソイツも俺は死んだもんだと思い込んでたから、最初は驚かれたけどな……」
そりゃそうだ、死んだと思っていた人間が、実は生きてたなんて……、それこそ狐にでも摘まれたような気分だったに違いない。
現にこの俺がそうだったんだから。
「それで? 智樹が行方不明になっていると知らされて、その後は?」
「ネット上に、ダンスに関する情報を、自由に書き込める掲示板があるのを知ってるか?」
「ああ、それなら……」
確か以前智樹と一緒に見たことがある。
ダンススクールの宣伝か、若しくはテレビでも良く目にするようなダンスグループについての書き込みが殆どだったが、中にはプロを目指すストリートダンサーの投稿動画なんかもあったりして、智樹は興味深げに動画を見ていた。
「その掲示板が智樹と何の関係が?」
俺が見た限りでは、そこに智樹の動画はアップされていなかったし、智樹自身高校時代に無料動画サイトに投稿したきり、動画の投稿は一切していない筈だ。
なのにそこに智樹に繋がる手掛かりがあるとは、到底思えない。
「あったんだよ、そこに智樹の名前が、アンタの劇場の名前と一緒にね……」
「えっ?」
確かにインターネットやSNSがこれだけ普及している時代だから、可能性ゼロではないが、それでも……だ。
「勿論、それが俺の探している智樹であるって保証はないし、もしかしたら人違いかもしれないって思ったよ? でも不思議なんだよな、そん時の俺には変な確信みたいなもんがあってさ……」
自嘲気味に笑って、松下は長い睫毛に縁取られた瞼をそっと伏せた。
そして次に瞼が開かれた時、その目は過ぎ去った過去に思いを馳せるような、そんな遠い目をしていた。
「俺は藁をも掴む思いでアンタの劇場のホームページを開いた。そしたらさ、いたんだよ、アイツが……。それもダンサーとしてね」
ストリップってのには驚いたけど……
そう言って松下は初めて俺の目の前で、とても穏やかな優しい笑顔を浮かべた。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説







寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる