S/T/R/I/P/P/E/R ー踊り子ー

誠奈

文字の大きさ
上 下
313 / 369
第25章   End of Sorrow

11

しおりを挟む
 「むさ苦しい所ですけど、どうぞ」

 俺は佐藤を部屋に招き入れた。

 本当は、荷物だけを下ろして、エントランスで別れるつもりだった。でも佐藤は、思いのほか多くなった荷物を見て、部屋まで荷物を運ぶのを手伝うと言い出した。


 有難かった。
 俺一人だったら、エレベーターを使ったところで、何往復かするのは確実だったから……
 それにチワワもいるし……


 ただ、部屋に上げるのだけは、どうしてだか躊躇われた。
 長いこと留守にしていたせいで、至る所に埃が溜まっているのもあったが、本音を言えば、比べられるのが嫌だったのかもしれない。
 勿論、佐藤と俺とでは、年齢も違えば、生活レベルだって、驚く程に違う。

 片や一代で上場する程の企業を立ち上げた佐藤と、劇場の運営を任されてはいるものの、世間的には二代目としてしか認められない俺とでは、全てにおいて差があって当然で……
 そんなことは、散々甘ちゃんだと言われてきた俺にだって分かる。
 でもそれよりも何よりも、俺は佐藤という男の懐のデカさには、どうしたってコンプレックスを抱かざるを得なかった。
 その佐藤が今、俺の目の前に座り、俺の淹れた安物のコーヒーを飲んでいるんだから、おかしなもんだ。

 「すいません、何のお構いも出来なくて」
 「構わないよ。それより……」

 カップをテーブルにコトリと置いて、佐藤が両指を絡めた上に顎を乗せた。

 「これからどうするつもりだい?」
 「どうするって、何がです?」
 「君は智樹を待つと言ったが、実際のところどうなんだい? 智樹の行きそうな所に宛でも?」
 「ありませんよ、そんなもん」

 大体からして、俺は智樹のことを知らな過ぎる。
 二人で暮らす中で、智樹が何を考え、何を思って来たのか、そして智樹の過去に何があったのか……
 殿様探偵から寄せられる情報で、ある程度のことは分かっているが、それだってどこまでが事実なのか、実際に確かめたこともない。


 俺は一体、智樹の何を見てきたんだろう……


 「そうか。もし俺に出来ることがあれば、遠慮なく言ってくれ。俺もあの子のことは気がかりでね」
 「あの、どうして貴方みたいな人が、そこまで?」

 ただの男娼と客の関係と言うには、あまりにも智樹に対して肩入れし過ぎている気がする。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

機械に吊るされ男は容赦無く弄ばれる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

少年探偵は恥部を徹底的に調べあげられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

不良少年達は体育教師を無慈悲に弄ぶ

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...