S/T/R/I/P/P/E/R ー踊り子ー

誠奈

文字の大きさ
上 下
291 / 369
第23章   Moving on

14

しおりを挟む
 そんな中、俺と智樹が二人きりで過ごす時間が訪れた。
 二人は偶然を装ったが、明らかに俺を想っての企みだということは、直ぐに分かった。
 何せ、佐藤は別として、和人が買い物に出かけたい、なんて言う筈がないから。


 さて、どうしたもんか……


 和人は一時間程で帰ると言っていたが、正直その一時間を、智樹と二人きりでどう過ごしたらいいのか、さっぱり分からない。
 俺は、畳に寝そべり、画用紙に向かって落書きを始めた智樹の横に寝転がり、頬杖を着いた格好で、その光景を眺めていた。

 ここに来てから気が付いたことだけど、智樹は絵を描いている時だけは、とても楽しそうな顔をする。


 一緒に暮らしていた頃は、絵を描いてる姿なんて、一度も見たことなかったのに……


 元々絵を描くことが好きだったんだろうな。

 「楽しいか?」

 問いかけた俺に、智樹は「うん」と頷く。
 少しづつではあるけど、俺の言葉に反応してくれるようになったことが嬉しい。

 すると、智樹は何かを思い出したように身体を起こし、部屋の隅に置かれた棚からクレヨンの箱を取り出した。


 智樹の手の中のクレヨンは、まだ新しい物なのにどうして……


 そんなことを思っていると、智樹が徐ろに箱の中から一本のクレヨンを取り出し、俺に差し出した。

 「これを……俺に?」

 受け取ったクレヨンは、真新しい青いクレヨンで……
 それが智樹の好きな色だと気付いた瞬間、俺達の間で何かが動き始めたような気がした。
 そして、続けて俺の前に差し出される真新しい画用紙……


 まさかとは思うけど……


 「俺に絵を描けって?」

 自慢じゃないが、俺は絵を描くのは昔っから苦手で、学生時代も、校内で開かれる作品展で笑いをかっさらったことも度々だ。だから出来ることなら絵なんて描きたくないし、描いたところで笑われるのが関の山……
 でも智樹は一歩も引くことなく、俺に画用紙を差し出してくるから仕方ない。

 「分かったよ、描きゃいいんだろ? そのかわり、絶対笑うなよ? いいな?」


 なんて……、俺の言葉なんてもう耳に入ってねぇか……


 智樹は再び画用紙に向かうと、無心で何かを描き始めた。


 智樹曰く、俺のらしいが……
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

機械に吊るされ男は容赦無く弄ばれる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

少年探偵は恥部を徹底的に調べあげられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

不良少年達は体育教師を無慈悲に弄ぶ

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

処理中です...