281 / 369
第23章 Moving on
4
しおりを挟む
それにしても、パーティー会場で何度か顔を合わせただけの男が、どうして?
「智樹は今俺の所にいる」
俺の疑問は、次に男の口から発せられた、その一言によって払拭された。
「智樹が? どうして……」
ついこの間殿様探偵から受けた報告では、智樹はまだあの男……松下潤一の元にいると聞いていたのに?
「どういうことだ……」
俺は飄々とした様子で紅茶を啜る殿様探偵に視線を向けた。説明しろと言わんばかりに……
「まあまあ、少し落ち着きませんか? 急いては事を仕損じますよ?」
落ち着け、か……
冷静さを欠いているのは、俺自身分かり過ぎる程分かっている。
智樹が絡んでいるとなれば、尚のことだ。
「翔真、座って?」
雅也に言われて、漸く自分が立ち上がっていることに気がつくくらいにね……
「すみません、つい取り乱してしまって。それで、どうして智樹があなたの所に? それに今朝のニュース、あれは一体……」
非礼を詫びると同時に、俺は再度同じ質問を繰り返した。
「ほお、ニュースをご覧になったのですね? ならば話は早い。 山本、詳しく説明して差し上げなさい」
空になったカップを受け取り、山本さんがコホンと咳払いをしてから、ファイルのような物を手に一歩前に進み出ると、実に淡々とした口調で、ファイルに綴じられた分書を読み上げた。
その間、誰一人として声を発することはなかった……というよりは、佐藤は大方の事情を把握しているからなんだろうが、俺と雅也に関しては声も出ない程、それほど大きな衝撃を受けていた。
それこそ目の前が真っ暗になるくらいの衝撃を……
「今朝のニュースについては以上でございます。続きまして、大田智樹様のことについてですが……」
ファイルを閉じた山本さんが、佐藤に目配せをする。
それを受けてか、佐藤はそれまで組んでいた足を解き、胸のポケットから一枚のメモ用紙を取り出し、テーブルの上に置いた。
そこには住所らしき物が書かれていて……
「これ……は?」
「智樹は今ここにいる。二木君も一緒だ」
酷く掠れた声で問いかけた俺に、そう答えるとキッと顔を引き締め、「ただ……」と、続けた。
「智樹は今俺の所にいる」
俺の疑問は、次に男の口から発せられた、その一言によって払拭された。
「智樹が? どうして……」
ついこの間殿様探偵から受けた報告では、智樹はまだあの男……松下潤一の元にいると聞いていたのに?
「どういうことだ……」
俺は飄々とした様子で紅茶を啜る殿様探偵に視線を向けた。説明しろと言わんばかりに……
「まあまあ、少し落ち着きませんか? 急いては事を仕損じますよ?」
落ち着け、か……
冷静さを欠いているのは、俺自身分かり過ぎる程分かっている。
智樹が絡んでいるとなれば、尚のことだ。
「翔真、座って?」
雅也に言われて、漸く自分が立ち上がっていることに気がつくくらいにね……
「すみません、つい取り乱してしまって。それで、どうして智樹があなたの所に? それに今朝のニュース、あれは一体……」
非礼を詫びると同時に、俺は再度同じ質問を繰り返した。
「ほお、ニュースをご覧になったのですね? ならば話は早い。 山本、詳しく説明して差し上げなさい」
空になったカップを受け取り、山本さんがコホンと咳払いをしてから、ファイルのような物を手に一歩前に進み出ると、実に淡々とした口調で、ファイルに綴じられた分書を読み上げた。
その間、誰一人として声を発することはなかった……というよりは、佐藤は大方の事情を把握しているからなんだろうが、俺と雅也に関しては声も出ない程、それほど大きな衝撃を受けていた。
それこそ目の前が真っ暗になるくらいの衝撃を……
「今朝のニュースについては以上でございます。続きまして、大田智樹様のことについてですが……」
ファイルを閉じた山本さんが、佐藤に目配せをする。
それを受けてか、佐藤はそれまで組んでいた足を解き、胸のポケットから一枚のメモ用紙を取り出し、テーブルの上に置いた。
そこには住所らしき物が書かれていて……
「これ……は?」
「智樹は今ここにいる。二木君も一緒だ」
酷く掠れた声で問いかけた俺に、そう答えるとキッと顔を引き締め、「ただ……」と、続けた。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説




寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開



ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる