S/T/R/I/P/P/E/R ー踊り子ー

誠奈

文字の大きさ
上 下
277 / 369
第22章   Not Believe

14

しおりを挟む
 パタン……と、まるで何かを吹っ切るかのように寝室のドアを閉めたオーナーは、バッグの中から一枚の書類を取り出した。
 よく見るとそれは、俺が入店の際に書かされた誓約書のような物で、オーナーは俺の目の前で破り捨てた。

 「二木、智樹を頼む」
 「オーナー……」
 「それから上杉のことは心配するな。俺が片をつける」

 一度は消えたと思ったオーナーの目の奥の炎が、再び燻り始めたような気がして……

 「オーナー、まさか危険な真似は……」

 後で智樹が事実を知った時、悲しむようなことだけはして欲しくない。

 「心配するな。そこまで馬鹿じゃないさ」


 オーナーはそう言ったけど、どうしてだろう、一抹の不安を感じるのは……




 オーナーが部屋を出て行き、後に残された俺達は、智樹が所持していた薬物の痕跡を跡形もなく処分した。とは言っても、智樹自身の身体から薬物を取り除くには、相当な時間がかかる。

 俺達は一先ず智樹を佐藤の自宅へと移すことにした。
 その方が、智樹にとっても、俺にとっても良いと思ったからだ。佐藤の助けがあったとしても、俺一人で智樹の面倒を見ることは到底不可能だし、佐藤にしたって同じだ。
 企業のトップである以上、仕事を疎かにして智樹にかかりきりになる訳にはいかない。

 俺は自分の分と智樹の分、最低限の荷物だけを纏め、佐藤の車に乗り込んだ。佐藤に抱きかかえられたまま部屋を後にした智樹は、相変わらず眠ったままだ。

 「これからが大変だな……」

 ハンドルを握った佐藤が、ポツリ言った。
 一度薬物に手を染めてしまったら、二度とそこから抜け出すことは難しいとは聞いたことがある。
 まるで底なし沼のようだ、と。

 先のことを考えれば、正直怖くなる。
 でも、それでも俺は、智樹を見捨てることなんて出来ないんだ。


 例えこの先どんな苦しみが待ち受けていようと……


 俺の膝で、安心しきったように眠る智樹の髪を撫で、俺は一人心に誓った。






 それから数日後、海外逃亡を図った上杉が、違法薬物所持の疑いで逮捕されたことが報じられた。

 そして、それに付随するように、違法に売春を斡旋していたことを理由に、松下潤一が経営していたショーパブが警察からの摘発を受け、オーナーである松下潤一が参考人として検挙されたことが、テレビや新聞各所で報じられた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

機械に吊るされ男は容赦無く弄ばれる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

不良少年達は体育教師を無慈悲に弄ぶ

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...