S/T/R/I/P/P/E/R ー踊り子ー

誠奈

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第22章   Not Believe

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 オーナーと二人きりの部屋は、酷く窮屈に感じられて、息が詰まりそうになる。
 智樹とは同級生だと聞いてるから、年は変わらない筈なのに、圧倒的な威圧感がそうさせるんだろうけど。

 「ところで、随分と散らかってるみたいだけど、泥棒でも入ったのか?」

 サングラスを外し、テーブルの上に置いてから、部屋をグルリと見回したオーナーが、冗談めかした口調で言った。

 「それは、その……」

 返事に困った丁度その時、チャイムが鳴り響き、外からロックが開錠された。

 この部屋のロックが外せるのは、三人しかいない。
 でもその内の一人は、俺が出勤しない限りこの部屋に来ることは無いし、もう一人は今俺のすぐ目の前にいる。

 となると、残るはただ一人、智樹の運転手でもある光司しかいない。

 俺は智樹を出迎えるべく、玄関ドアの前に立った。
 事実を知ってしまった以上、智樹の顔を見るのは正直怖かったけど、でも強ばった顔に無理矢理笑顔を作った。
 これから起こるだろうことを考えれば、少しでも智樹に不安を与えたくなかった。

 静かに開いたドアの向こうには、光司を先に帰したんだろう佐藤と智樹がいて、佐藤に支えられるように立っていた智樹は、俺の顔を見るなり力なく手を伸した。
 俺はその手を引くと、痩せ細った身体を胸の中に抱きとめた。

 「おかえり」
 「ただ……いま……」

 背中を摩ってやると、智樹は酷く安心した様子で俺の肩に顔を埋めた。


 でも、それもほんの一瞬のことで……


 すぐに顔を上げると、まるで人が変わってしまったかのように顔を険しく歪め、俺の腕を振り払った。

 「なんで……だよ、なんでお前がいんだよ。出てけ……、出てけよ……っ!」

 狂気に満ちた目でオーナーを睨み付け、荒れ狂ったように床を踏み鳴らし、腕を振り回した。

 「智樹……っ、落ち着いて、ね?」

 俺は鼻息を荒くする智樹を押さえ込もうと、空を切る腕を掴んだ。


 でもさ、俺の非力な腕じゃ適うわけないよね……


 掴んだ手は簡単に振り解かれ、その反動で俺は床に尻餅をついた。

 「い、一体なんなんだよ……」

 その光景を、オーナーはただただ呆然とした様子で見ていて……

 「ぶっ殺してやる……」

 半狂乱の智樹に胸倉を掴まれた瞬間、その顔は恐怖に変わり、智樹が拳を振り上げる。

 「ひ……っ!」

 まるで鬼の形相と化した智樹の拳から逃れようと、オーナーが椅子ごと後ずさり、そのまま床に倒れた。
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