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第21章 Fade away
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何となく、なんだけど……、普段なら絶対しないんだけど……、いつもは大きく見えていた佐藤が、何故だか凄く小さくて、弱々しく見えてしまって、気付いた俺は佐藤の頭をそっと撫でていた。
「まさか智樹に頭を撫でられるとはな、俺も大したことないね?」
「そ、そんなことねぇよ。別にさ、大の男が泣いちゃいけないって法はねぇし、なんなら俺なんか……」
自分でも情けなくなるくらい泣いてばっかだし……
これでも前はそうでもなかったのに、ここ最近自分の感情の持って行き場が分からなくて、勝手に涙が溢れて来て止められなくなることが頻繁にある。
「聞いてもいいか?」
「なんだい?」
「弟さん、何の病気で?」
瞬間、俺の手に重なっていた佐藤の手がピクりと震えたのが分かった。
聞いちゃいけないこと……だったんだろうか?
佐藤は漸く穏やかになった顔を再び険しくさせ、俺の手を引き、自分の隣に座らせた。肩を抱き寄せられ、コツンと預けた俺の頭を、今度は佐藤の手が撫でた。
「俺も詳しくは知らないんだ。ただ病気としか聞いてなくてね」
その頃丁度留学中だった佐藤は、留学先にかかってきた一本の電話で、弟の突然の死を知らされたと言った。
そのせいか、随分長いこと、弟の死を受け入れることが出来なかった、と。
「だから初めて俺のスタジオで踊る智樹を見た時、弟が生き返ったのかと思ってね」
それでなのか……
俺が佐藤の前で踊ったことなんて、ただの一度だってないのに、どうして俺がダンスをしてることを知っていたのか、それがずっと引っかかってた。
潤一とほぼ泊まり込みでダンスレッスンをしたスタジオ、あれは佐藤の持ち物だったんだ。
なるほどな、それで漸く合点がいった。
「勿論、智樹のダンスと明広のダンスとでは全くの別物なんだが、随所に見られるキレの良さと、足さばき、それから神経の行き届いた指先を見た時、俺は確信したんだ、この子なら明広が叶えられなかった夢を叶えてくれるって」
「そんなの、俺みたいなのざらにいるって。それに俺はもう……」
二度と踊らないって、そう決めてるから。
それに今の俺には、明るい未来を夢見る資格なんてない……いや、夢なんて見ちゃいけないんだ
俺が夢を見れば、また誰かを傷付けてしまうことになるから。
「まさか智樹に頭を撫でられるとはな、俺も大したことないね?」
「そ、そんなことねぇよ。別にさ、大の男が泣いちゃいけないって法はねぇし、なんなら俺なんか……」
自分でも情けなくなるくらい泣いてばっかだし……
これでも前はそうでもなかったのに、ここ最近自分の感情の持って行き場が分からなくて、勝手に涙が溢れて来て止められなくなることが頻繁にある。
「聞いてもいいか?」
「なんだい?」
「弟さん、何の病気で?」
瞬間、俺の手に重なっていた佐藤の手がピクりと震えたのが分かった。
聞いちゃいけないこと……だったんだろうか?
佐藤は漸く穏やかになった顔を再び険しくさせ、俺の手を引き、自分の隣に座らせた。肩を抱き寄せられ、コツンと預けた俺の頭を、今度は佐藤の手が撫でた。
「俺も詳しくは知らないんだ。ただ病気としか聞いてなくてね」
その頃丁度留学中だった佐藤は、留学先にかかってきた一本の電話で、弟の突然の死を知らされたと言った。
そのせいか、随分長いこと、弟の死を受け入れることが出来なかった、と。
「だから初めて俺のスタジオで踊る智樹を見た時、弟が生き返ったのかと思ってね」
それでなのか……
俺が佐藤の前で踊ったことなんて、ただの一度だってないのに、どうして俺がダンスをしてることを知っていたのか、それがずっと引っかかってた。
潤一とほぼ泊まり込みでダンスレッスンをしたスタジオ、あれは佐藤の持ち物だったんだ。
なるほどな、それで漸く合点がいった。
「勿論、智樹のダンスと明広のダンスとでは全くの別物なんだが、随所に見られるキレの良さと、足さばき、それから神経の行き届いた指先を見た時、俺は確信したんだ、この子なら明広が叶えられなかった夢を叶えてくれるって」
「そんなの、俺みたいなのざらにいるって。それに俺はもう……」
二度と踊らないって、そう決めてるから。
それに今の俺には、明るい未来を夢見る資格なんてない……いや、夢なんて見ちゃいけないんだ
俺が夢を見れば、また誰かを傷付けてしまうことになるから。
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