S/T/R/I/P/P/E/R ー踊り子ー

誠奈

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第20章   Omen

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 俺はその匂いを客の残り香だと思って、それ以上気にすることはしなかった。


 実際はそうじゃなかったのに……



 智樹に感じる違和感は、日を追うごとに大きくなった。

 何度呼びかけても起きることなく、まるで死んだように眠り続ける日もあれば、夜通し起きていることも度々だった。そして何より、元々そんなにお喋りなタイプでもなかったのに、人が変わったみたいに多弁になったりと、俺が知っている智樹とは、全く別人になってしまったみたいだった。
 それでも仕事に穴を空けることもなかったし、寧ろ仕事が終わった後、やたらと上機嫌な智樹が無意識に歌う声を聞くのが、何よりの楽しみになっていた。


 尤も、何度聞いても、本人は歌なんか歌ってないって言い張るけど……


 そんなある日、仕事に向かう途中の車内で、柳が佐藤と会う機会が得られたことを俺に告げた。
 勿論だけど、オーナーから怪しまれないように、名目上は仕事と言うことにした。
 どうやら、柳から話を持ちかけられた光司が、佐藤に俺を指名するよう頼み込んでくれたらしい。

 佐藤がどう思ったのかは、正直なところ分からないけど、もしかしたら佐藤自身、智樹に対して何らかの違和感を感じているのかもしれない。
 そうでなかったら、それまで智樹一筋だった佐藤が、いくら光司に頼み込まれたからと言って、俺を指名するなんてことはないだろうから。


 何はともあれ、佐藤に会うことで、俺が智樹に感じている違和感の正体を知る手がかりになれば……


 俺は佐藤から指定された日時と場所を書いたメモを柳から受け取り、金なんて殆ど入っていない財布の中に仕舞った。財布の中なら、万に一つ智樹に見つかったとしても、誤魔化すことは出来る。
 智樹が俺の仕事に口を出すことも、関心を持つこともないから、そこまで用心する必要もないけど、念には念を入れての事だった。

 「あ、このことは智樹には……」
 「分かってます。光司にも口止めしておきましたから」

 相変わらず気の利く奴で助かるよ。

 「それに佐藤様からも、この件は智樹さんには絶対伏せるよう、光司がきつく申しつかってるみたいですし……」
 「そっか」


 そうだよな。
 佐藤が智樹に本気だってことは、何となく……だけど、薄々感じていたし……

 と、なると佐藤だって、俺を指名したことが智樹に知れれば立場はないだろし、智樹に嫌われたくない一心なんだろうな……
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