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第16章 To a new stage
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体格差なんて殆どないのに、和人の胸が凄く広くて大きく感じる。
「和人はさ、その……初めてウリやった時、怖くなかった?」
「それは……」
見上げた俺を、泣き顔を困ったように曇らせて和人が見下ろすけど、すぐに自嘲するように笑って、胸に顔を埋めたままの俺の肩をトンと叩いた。
「俺の場合はさ、仕方なかったって言うかさ、それしか生きる術が無かったから。だから、怖いとか言ってらんなかったかな」
身寄りも無く、学校すらまともに出ていない和人が生きて行くには、相当な苦労があったとは思う。それなりの覚悟だって、当然あった筈だ。
でもそれを、仕方なかった……なんて一言で片付けるなんて、悲し過ぎんだろ。
「そりゃさ、最初は超緊張したし、中にはおかしな趣味の客もいたりしてさ、正直怖い思いもしたよ? でもさ、慣れって恐ろしいもんで、自分の身体が金になると思ったら、そんな恐怖も消えちゃった。……それに、セックスすんのも嫌いじゃなかったしね?」
そう言った和人の顔が、不思議と大人びて見える。
普段は俺なんかよりも、ずっと可愛らしい顔してんのに……
「でもね、智樹。 俺、智樹には俺みたいになって欲しくないんだ。俺が金のために自分の身体を犠牲にしたように、智樹にはアイツのために自分を犠牲にして欲しくないんだ。だって智樹、翔真さんのこと、本気で愛してんでしょ?」
確かに翔真のことは愛してる。
こうして離れてみて初めて、その想いの深さに俺自身が驚いたくらいだから、それは紛れもない事実。
「でも、だからこそ……愛してるからこそ、劇場にも、それから翔真にも迷惑をかけたくないんだ」
『智樹が断れば、あの劇場がどうなるか分かってるよね?』
俺の耳元に潤一が囁いた言葉、アレはきっと脅しなんかじゃない。もし俺が拒めば、潤一どんな手を使ってでも劇場を潰しにかかるだろう。
だったら俺の出すべき答えは、ただ一つだ。
それが例え翔真を苦しませることになろうと……
更に悲しませることになろうと……
翔真と、あの劇場だけは、どうしても守りたいんだ。
いや、守らなきゃいけないんだ。
「和人はさ、その……初めてウリやった時、怖くなかった?」
「それは……」
見上げた俺を、泣き顔を困ったように曇らせて和人が見下ろすけど、すぐに自嘲するように笑って、胸に顔を埋めたままの俺の肩をトンと叩いた。
「俺の場合はさ、仕方なかったって言うかさ、それしか生きる術が無かったから。だから、怖いとか言ってらんなかったかな」
身寄りも無く、学校すらまともに出ていない和人が生きて行くには、相当な苦労があったとは思う。それなりの覚悟だって、当然あった筈だ。
でもそれを、仕方なかった……なんて一言で片付けるなんて、悲し過ぎんだろ。
「そりゃさ、最初は超緊張したし、中にはおかしな趣味の客もいたりしてさ、正直怖い思いもしたよ? でもさ、慣れって恐ろしいもんで、自分の身体が金になると思ったら、そんな恐怖も消えちゃった。……それに、セックスすんのも嫌いじゃなかったしね?」
そう言った和人の顔が、不思議と大人びて見える。
普段は俺なんかよりも、ずっと可愛らしい顔してんのに……
「でもね、智樹。 俺、智樹には俺みたいになって欲しくないんだ。俺が金のために自分の身体を犠牲にしたように、智樹にはアイツのために自分を犠牲にして欲しくないんだ。だって智樹、翔真さんのこと、本気で愛してんでしょ?」
確かに翔真のことは愛してる。
こうして離れてみて初めて、その想いの深さに俺自身が驚いたくらいだから、それは紛れもない事実。
「でも、だからこそ……愛してるからこそ、劇場にも、それから翔真にも迷惑をかけたくないんだ」
『智樹が断れば、あの劇場がどうなるか分かってるよね?』
俺の耳元に潤一が囁いた言葉、アレはきっと脅しなんかじゃない。もし俺が拒めば、潤一どんな手を使ってでも劇場を潰しにかかるだろう。
だったら俺の出すべき答えは、ただ一つだ。
それが例え翔真を苦しませることになろうと……
更に悲しませることになろうと……
翔真と、あの劇場だけは、どうしても守りたいんだ。
いや、守らなきゃいけないんだ。
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