S/T/R/I/P/P/E/R ー踊り子ー

誠奈

文字の大きさ
上 下
178 / 369
第15章   Signs

13

しおりを挟む
 「っていうかさ、和人がウリやってたなんてさ、俺ショックで……。ってか、翔真は知ってたの?」

 雅也の顔が、一瞬にして泣き笑いのような複雑な物へと変わる。

 「いや、それは俺も初耳だったわ……」
 「もうさ、なんか全部信用出来ないっていうかさ……」

 確かにな……、惚れた相手が、例え過去のことではあっても、ウリやってた……なんて知ったら、雅也じゃなくても落ち込むだろうし、その気持ちは分からなくもない。


 こんな仕事を生業としてる俺でも、もし智樹がって考えたら……


 「でも、だぜ? もしその話が事実だとして、お前今更和人のこと嫌いになれんのか?」

 一度は惚れた相手だ、そうそう簡単に嫌いになんてなれるわけねぇ。

 「少なくとも、俺は智樹が過去にどんな秘密を抱えていようと、智樹のことを嫌いにはなれねぇし、忘れることは出来ねぇ。……そりゃ、ショックは受けるだろうがな?」

 それが深く愛した相手ならば尚更で、もしも過去が原因で嫌いになれるなら、それは本気で惚れてない証拠だ。

 「お、俺は……お、俺だって今更和人のこと嫌いになんかなれないよ」


 だよな、雅也ならそう言うと思ったぜ。


 「俺さ、思ったんだ。どうして気付いてやれなかったのかなって。絶対苦しんでた筈なんだ。でも俺気付いてやれなかった。それがさ、なんかもう……、悔しくてさ」

 ついに堪えられなくなったのか、指で目頭を押さえる雅也の肩を、俺はポンと叩くとそのままそっと抱き寄せた。

 「気付いてやれなかったのは俺も同じだから」


 俺だって智樹が何を抱え、何を考えてるのか、全く気付いてやれなかったんだから……


 どこかで分かっていた筈なのにな、智樹がいつか俺の前からいなくなるって、頭の片隅では分かっていながら、俺は智樹の苦悩から眼を逸らし続けた。
 それを考えたら、雅也なんかより、俺の方がよっぽど罪深い。

 「なんか俺ら、マジでどうしようもねぇな?」
 「ホント、最低だね、俺ら……」


 惚れた相手一人繋ぎ止めておけねぇんだから……
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

機械に吊るされ男は容赦無く弄ばれる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

少年探偵は恥部を徹底的に調べあげられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

不良少年達は体育教師を無慈悲に弄ぶ

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

処理中です...