173 / 369
第15章 Signs
8
しおりを挟む
劇場までタクシーで戻った俺は、「たまにはマンション帰ったら」と言う雅也に首を振り、裏口のから無人の劇場に入り、迷うことなく支配人室へと向かった。
「疲れた……」
何度も智樹と愛し合ったソファーに身を横たえると、すぐに睡魔が襲ってくる。
でも不思議と眠れねぇんだよな……。
やっぱ素直にマンションに帰っとけば良かったかな。
でもなぁ、どうしても帰る気になれねぇんだよな、そこに智樹がいたっていう痕跡が多く残り過ぎてるあの部屋には……
実際、智樹が俺の前から姿を消してからもう何日も経つってのに、俺があの部屋に帰ったのは数える程だ。それも着替えを取りに行く程度で、長時間滞在することはほぼない。
飯だってろくに食えてないし、たかだか恋人に捨てられたくらいで、ここまでボロボロになるとは、大概未練たらしくて、情けなくなってくる。
それだけ智樹に惚れてた…ってことなんだろうけど……
俺はジャケットの胸ポケットに入れたままのスマホを取り出すと、雅也に電話をかけた。
さっき別れたばかりってこともあって少々気が引けたが、頭の中のモヤモヤを少しでも早く消し去りたかった。
「もしも~し、どうしたの?」
返って来たのは、相変わらずの能天気な声で、内心呆れもするが、いつもと変わりのない様子にホッとする。
「ああ、悪いんだけどさ、お前の知り合いに探偵の真似事してた奴いたよな?」
「ああ、お殿様のこと?」
「おお、それだそれ」
最初雅也からその人のことを聞かされた時、随分と巫山戯た名前に笑った覚えがある。
「お殿様がどうかした?」
「お前さ、そのお殿様とやらとは、連絡取れんのか?」
「取れなくはないけど……どうして?」
妙なとこで察しが良くて、肝心な時には察しが悪いのは、流石相原雅也だぜ。
「一つ頼まれてくんねぇかなと思ってさ」
本当は、自分の手で……そう思わなくはないけど。
「疲れた……」
何度も智樹と愛し合ったソファーに身を横たえると、すぐに睡魔が襲ってくる。
でも不思議と眠れねぇんだよな……。
やっぱ素直にマンションに帰っとけば良かったかな。
でもなぁ、どうしても帰る気になれねぇんだよな、そこに智樹がいたっていう痕跡が多く残り過ぎてるあの部屋には……
実際、智樹が俺の前から姿を消してからもう何日も経つってのに、俺があの部屋に帰ったのは数える程だ。それも着替えを取りに行く程度で、長時間滞在することはほぼない。
飯だってろくに食えてないし、たかだか恋人に捨てられたくらいで、ここまでボロボロになるとは、大概未練たらしくて、情けなくなってくる。
それだけ智樹に惚れてた…ってことなんだろうけど……
俺はジャケットの胸ポケットに入れたままのスマホを取り出すと、雅也に電話をかけた。
さっき別れたばかりってこともあって少々気が引けたが、頭の中のモヤモヤを少しでも早く消し去りたかった。
「もしも~し、どうしたの?」
返って来たのは、相変わらずの能天気な声で、内心呆れもするが、いつもと変わりのない様子にホッとする。
「ああ、悪いんだけどさ、お前の知り合いに探偵の真似事してた奴いたよな?」
「ああ、お殿様のこと?」
「おお、それだそれ」
最初雅也からその人のことを聞かされた時、随分と巫山戯た名前に笑った覚えがある。
「お殿様がどうかした?」
「お前さ、そのお殿様とやらとは、連絡取れんのか?」
「取れなくはないけど……どうして?」
妙なとこで察しが良くて、肝心な時には察しが悪いのは、流石相原雅也だぜ。
「一つ頼まれてくんねぇかなと思ってさ」
本当は、自分の手で……そう思わなくはないけど。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説






寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる