172 / 369
第15章 Signs
7
しおりを挟む
「こんなことなら車で来ればよかったね?」
タクシーを待つ間、街路樹を囲う木製のベンチに腰を下ろし、コンビニで買った缶ビールを傾けながら、雅也が苦笑する。
「仕方ねぇよ」
ビールの冷たさが、徐々に俺に冷静さを取り戻させて行く。
「なあ、正直どう思った?」
「どう、って?」
多分俺が何を言いたいのか、雅也は分かってる。でも敢えてはぐらかそうとするのは、俺の性格を熟知しているからだろうな。
「うーん、そうだなぁ……」
雅也が空になった缶をクシャッと握り潰し、数メートル先のゴミ箱に向かって投げる。流石元バスケ部員だけあって、コントロールは抜群だ。
「なんかさ、あんなの別にショーでも何でもないって言うかさ。うちと比較する程のモンじゃない、って言うか……」
「まあな」
思うことは同じ、ってことか。
見てくれは良いが、いや……寧ろ見てくれだけは良いと言った方が正しいのか、外観や内装にしても、ステージの設備にしても、相当な金を注ぎ込んだんだろうってことは、一見しただけで分かる。
ダンサーにしたってそうだ。
見た目さえ良ければ、ダンススキルなんてモンは二の次の素人同然のダンサーばかりで、正直まともに見る気にもならなかった。メインダンサーにしたって、素人同然の俺から見たって、メインを張るだけの腕は持ち合わせちゃいねぇ。
それに加えてあの接待だ。
あれじゃまるで、ゲイ相手の娼館と同じじゃねぇか……
あんな成金趣味のイカれた店に、あの智樹が関わっているとは思いたくないが、それでも胸の奥に沸き起こる疑惑が拭い切れないのは、あの曲が何故あの場所で使われたか……ってことだ。
この俺ですら持っていない音源を、誰か他の人間が……なんてことはまず考えられない。だとすると、智樹があの店に関係している可能性は極めて高い。そもそもどんな経緯で俺の所に招待状が来たのか、それすらも謎だ。
やっぱりオーナーの顔ぐらいはおがんでおくべきだったな……
一つ深い溜息を落とした丁度その時、俺達の前で一台のタクシーが止まった。
タクシーを待つ間、街路樹を囲う木製のベンチに腰を下ろし、コンビニで買った缶ビールを傾けながら、雅也が苦笑する。
「仕方ねぇよ」
ビールの冷たさが、徐々に俺に冷静さを取り戻させて行く。
「なあ、正直どう思った?」
「どう、って?」
多分俺が何を言いたいのか、雅也は分かってる。でも敢えてはぐらかそうとするのは、俺の性格を熟知しているからだろうな。
「うーん、そうだなぁ……」
雅也が空になった缶をクシャッと握り潰し、数メートル先のゴミ箱に向かって投げる。流石元バスケ部員だけあって、コントロールは抜群だ。
「なんかさ、あんなの別にショーでも何でもないって言うかさ。うちと比較する程のモンじゃない、って言うか……」
「まあな」
思うことは同じ、ってことか。
見てくれは良いが、いや……寧ろ見てくれだけは良いと言った方が正しいのか、外観や内装にしても、ステージの設備にしても、相当な金を注ぎ込んだんだろうってことは、一見しただけで分かる。
ダンサーにしたってそうだ。
見た目さえ良ければ、ダンススキルなんてモンは二の次の素人同然のダンサーばかりで、正直まともに見る気にもならなかった。メインダンサーにしたって、素人同然の俺から見たって、メインを張るだけの腕は持ち合わせちゃいねぇ。
それに加えてあの接待だ。
あれじゃまるで、ゲイ相手の娼館と同じじゃねぇか……
あんな成金趣味のイカれた店に、あの智樹が関わっているとは思いたくないが、それでも胸の奥に沸き起こる疑惑が拭い切れないのは、あの曲が何故あの場所で使われたか……ってことだ。
この俺ですら持っていない音源を、誰か他の人間が……なんてことはまず考えられない。だとすると、智樹があの店に関係している可能性は極めて高い。そもそもどんな経緯で俺の所に招待状が来たのか、それすらも謎だ。
やっぱりオーナーの顔ぐらいはおがんでおくべきだったな……
一つ深い溜息を落とした丁度その時、俺達の前で一台のタクシーが止まった。
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる