S/T/R/I/P/P/E/R ー踊り子ー

誠奈

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第13章   Life

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 「合格だ、智樹」

 翔真がステージに飛び乗り、板の上に散らばった俺のシャツを拾い上げた。

 「えっ……?」
 「なんて顔してんだ。ただでさえ気の抜けたような顔が、更に面白いことになってるぞ?」

 酷い言いようだけど、それくらい酷く間抜け面をしてたんだろうな、翔真がクスクスと肩を揺らした。

 「えっと……、その……、俺……」

 合格だと言われても尚、状況が飲み込めずにいた俺は、必死で笑いを噛み殺す翔真と、ステージ下で手を叩く雅也を交互に見た。

 「踊って……いいの……か?」


 ここで……、このステージで……、俺は……


 「本当……に?」
 「ああ、思う存分踊れ。写真のアイツの分までな……」

 出来る事なら潤一と一緒に同じ夢を追いかけ、潤一と二人で同じ夢を叶えたかった。でもそれはもう二度と叶えることはない。


 だったら俺が潤一の分まで……いや、潤一の代わりに……
 そしたらいつか……、いつの日か……


 「潤一が俺を許してくれる日が来るの……かな?」
 「ああ、来るさ。お前が踊り続けてる限りな?」

 俺の肩にシャツをかけながら、フワリと包み込むように翔真が俺を抱き寄せる。
 その表情はさっきまでの支配人然とした顔ではなく、いつもの、ちょっと困ったような、だけど俺をまるっと包み込むような、柔らかな笑顔だった。

 「あー、お取込み中のところ申し訳ないんだけどさ、そろそろ客入れの時間なんだよね」

 雅也の声で我に返った俺と翔真は、二人同時に壁の時計を見上げると、顔を見合わせてプッと吹き出した。

 「ちょっとちょっとぉ、笑ってる場合じゃないってば、もぉっ」

 そんな俺達の様子に、雅也は一人慌てた様子でバタバタとホールを飛び出して行った。

 「相変わらず騒々しい奴だぜ」
 「でも信頼してるんだろ、雅也のこと」

 じゃなきゃ、副支配人なんて任せないだろうし、オーディションの最終判断を委ねたりはしないだろうから。

 「まあな。つか、お前もそろそろ行かねぇと、また雅也の奴にドヤされっぞ?」
 「ふふ、それは勘弁だな」

 俺は肩を竦めると、翔真の手から服を受け取り、身に纏った。
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