S/T/R/I/P/P/E/R ー踊り子ー

誠奈

文字の大きさ
上 下
139 / 369
第12章   Goodbye, and

12

しおりを挟む
 言われるがまま、抱き竦められたような格好でジッとしていると、再び聞こえ始めた鼾……


 嘘だろ……?


 振り解こうにも、さっきよりも重みを増した腕は、俺が思うよりもずっと重くて……


 コレどうすりゃいいんだよ……


 俺は唯一動くことを許された首だけを動かして、鼾の主の顔を見上げた。
 潤一とはまたタイプの違う、寝顔でも分かる端正な顔立ちと、寝癖はついてるもののサラリと額にかかる前髪……


 見たとこ、良い暮らししてるみたいだし………、きっとモテんだろうな。
 ま、コイツがモテようがモテまいが、俺には関係のないことだけど……

 どうせ俺の命なんて、明日には無くなってるんだから。


 ぼんやりとそんなことを考えていた時だった。
 それまで耳元で煩いくらいに響いていた鼾がピタリと止み、背中にあった腕がゆっくりと動いた。

 「見とれてんじゃねぇよ……」
 「み、見とれてなんか……ねぇし……」
 「ふーん……、じゃあ……」

 後頭部を撫でていた手が頬へと移り、親指の腹が俺の目尻を掠めた。

 「何でそんな顔して泣く……」


 えっ……?


 クッキリとした二重に縁取られた目が、まるで俺を憐れむかのように見つめる。人に憐れんで貰う資格も、まして生きている資格も、潤一を殺した俺にはありはしないのに……

 「死なせてくれ……」

 ポツリ呟いた俺の一言に、見開かれた目が一瞬険しく細められる。そして短く息を吐き出すと、それまで俺の足に絡めていた足を解き、ベッドヘッドに凭れかかるように身体を起こした。
 サイドチェストに手を伸ばし、シガーケースから取り出したタバコを咥え、慣れた手付きでライターで火を付けると、一気に辺りを漂い始めたタバコの煙が目に染みる。

 「死にたきゃ死ねばいい。俺は止めはしねぇから……」

 たまたま道端で倒れてたのを拾っただけだから……、そう付け加えると、男は吸い込んだ煙を一気に吐き出した。

 「但し、借りた恩はキッチリ返してからにしろ」
 「えっ……?」
 「本気で死にたきゃ、別にそれからだって遅くはねぇだろ?」




 今思えば、その時の翔真一言がなければ、死への欲望に突き動かされるまま、俺は自ら命を絶っていたのかもしれない。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

機械に吊るされ男は容赦無く弄ばれる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

不良少年達は体育教師を無慈悲に弄ぶ

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...