S/T/R/I/P/P/E/R ー踊り子ー

誠奈

文字の大きさ
上 下
131 / 369
第12章   Goodbye, and

しおりを挟む
 俺は鼻をズッと鳴らすと、ベンチに置きっ放しにしてあった大き目のボストンバッグを手に取った。

 母ちゃんがパンパンに詰めた重いバッグを肩に担ぎ、一歩を踏み出そうとした時、背後で砂利を踏むような音がして、俺の背中がフワッと暖かい物で包まれ、肩から滑り落ちたボストンバッグは地面にドサリと音を立てて落ちた。

 「もう……、なんで智樹が泣いてんの?」

 背中から回された腕が俺を強く抱き竦め、肩口に顔を埋めた潤一の熱い吐息が俺の首筋を擽る。

 「そ、そんなの……、俺にだって分かんねぇよ……」


 ただ理由わけもなく涙が次から次へと溢れて、止まんないんだよ……


 「智樹って、ホント泣き虫だね?」
 「う、うっせぇ……」

 以前と同じように俺を揶揄う口調が嬉しくて、咄嗟に振り向いた瞬間、不意に絡む視線と、むくれた俺の頬を摘む潤一の指。


 きっと笑ってる……って、そう思ってた。

 なのにすぐ真近にあった顔は真剣そのもので……


 「潤一……?」

 俺が見上げると、その表情は更に真剣な物へと変わった。

 「キス、していい?」

 これで最後にするから……、そう言って頬を摘んだ手を顎へと滑らせる。


 勿論、俺にそれを拒む理由なんてどこにもなくて……


 「……うん」

 コクリと頷いて返すと、潤一の顔がほんの僅かに綻び、ゆっくりと詰めた距離が無くなった時、俺の唇に潤一の震える唇が重なった。
 でもそれはほんの一瞬のことで、一瞬ピタッとくっついたかと思った唇が離れた途端、俺達はお互いの赤くなった顔を見合わせて吹き出した。

 「智樹、顔真っ赤」
 「お、お前だって……。大体、こんな真昼間の公園で、男同士でキ、キスなんて……、誰か知り合いにでも見られたら…」
 「間違いなく明日から俺達、揃って変態扱いだよね」
 「ホントだよ……」


 もっとも、明日から俺はこの町にはいないけど……

 こんな風に笑い合えるのは、今日で最後だから……
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

機械に吊るされ男は容赦無く弄ばれる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

不良少年達は体育教師を無慈悲に弄ぶ

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...