S/T/R/I/P/P/E/R ー踊り子ー

誠奈

文字の大きさ
上 下
129 / 369
第12章   Goodbye, and

しおりを挟む
 「久しぶり……」

 約束した時間通り、待ち合わせ場所に姿を現した潤一は、俺が知ってる潤一の笑顔そのままで……

 「お、おう……。なんか、急に呼び出したりして悪かったな……」

 なのに妙に緊張する。

 それにあれから随分と日が経ったとは言え、あの日のことを思い出すと、恥ずかしさだって込み上げてくる。
 あの時の俺はどうかしてた……、なんて在り来りな言い訳が通用する程、一度感じたあの感覚はまだ薄れちゃいない。

 「ううん、構わないよ。で、話って?」
 「あ、ああ、実はさ……」


 何だっけ……、俺、潤一に会って何を言おうとしたんだっけ……


 用意してあった言葉の全ては、潤一と対面した瞬間に俺の頭の中からすっかり消え失せていた。


 潤一に会ったら伝えたいこと、いっぱいあったのに……


 「そう言えばさ、学校辞めたんだってね? 誰だっけ……智樹のクラスの奴に聞いたよ」

 いつまで経っても口を開かない俺を見兼ねたのか、潤一がベンチに腰を下ろしながら言った。

 「ああ、うん……。先週かな、退学届出してきた」


 なんだ、知ってたのか……、それなら話早いじゃん……


 「実はさ、急なんだけどさ、今日行くんだ……」
 「行くって、N’s カンパニー?」
 「うん、まあ……」

 お互い向き合ってるわけじゃないから表情は分からないけど、見なくたって声のトーンだけで潤一の顏が曇ったのが分かる。

 「あのさ、俺本当は……」
 「頑張れよな、 俺、応援してるから」

 言いかけた俺の言葉を遮り、潤一が勢い良く腰を上げる。そして俺に向かって右手を差し出すと、膝の上で握ったままの俺の手を取り、半ば強引に握手をした。
 その顔は、逆行になっててハッキリとは見えないけど、きっと泣きそうな顔してんだろうと思う。

 「いつか……さ、智樹がデカいステージで踊ってるの見に行くから……。だから俺の分まで頑張れ。つか、デビューのステージ決まったら、チケット送れよな?」

 時折声を詰まらせながらかけられる言葉に、胸が締め付けられそうになる。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

生意気な少年は男の遊び道具にされる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...