S/T/R/I/P/P/E/R ー踊り子ー

誠奈

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第12章   Goodbye, and

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 「久しぶり……」

 約束した時間通り、待ち合わせ場所に姿を現した潤一は、俺が知ってる潤一の笑顔そのままで……

 「お、おう……。なんか、急に呼び出したりして悪かったな……」

 なのに妙に緊張する。

 それにあれから随分と日が経ったとは言え、あの日のことを思い出すと、恥ずかしさだって込み上げてくる。
 あの時の俺はどうかしてた……、なんて在り来りな言い訳が通用する程、一度感じたあの感覚はまだ薄れちゃいない。

 「ううん、構わないよ。で、話って?」
 「あ、ああ、実はさ……」


 何だっけ……、俺、潤一に会って何を言おうとしたんだっけ……


 用意してあった言葉の全ては、潤一と対面した瞬間に俺の頭の中からすっかり消え失せていた。


 潤一に会ったら伝えたいこと、いっぱいあったのに……


 「そう言えばさ、学校辞めたんだってね? 誰だっけ……智樹のクラスの奴に聞いたよ」

 いつまで経っても口を開かない俺を見兼ねたのか、潤一がベンチに腰を下ろしながら言った。

 「ああ、うん……。先週かな、退学届出してきた」


 なんだ、知ってたのか……、それなら話早いじゃん……


 「実はさ、急なんだけどさ、今日行くんだ……」
 「行くって、N’s カンパニー?」
 「うん、まあ……」

 お互い向き合ってるわけじゃないから表情は分からないけど、見なくたって声のトーンだけで潤一の顏が曇ったのが分かる。

 「あのさ、俺本当は……」
 「頑張れよな、 俺、応援してるから」

 言いかけた俺の言葉を遮り、潤一が勢い良く腰を上げる。そして俺に向かって右手を差し出すと、膝の上で握ったままの俺の手を取り、半ば強引に握手をした。
 その顔は、逆行になっててハッキリとは見えないけど、きっと泣きそうな顔してんだろうと思う。

 「いつか……さ、智樹がデカいステージで踊ってるの見に行くから……。だから俺の分まで頑張れ。つか、デビューのステージ決まったら、チケット送れよな?」

 時折声を詰まらせながらかけられる言葉に、胸が締め付けられそうになる。
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