S/T/R/I/P/P/E/R ー踊り子ー

誠奈

文字の大きさ
上 下
116 / 369
第11章   First contact

しおりを挟む
 その日、いつもの公園に行くと、見知らぬ男がベンチに座っていた。
 普段はその時間帯に人がいることなんてまず無かったから、少しだけ違和感と苛立ちを感じた。


 チッ……、先越されたか。


 不審に思いながらも、俺は心の中で舌打ちして、少し離れた場所で潤一が来るのを待つことにした。
 その男がN’sカンパニーの代表、錦野だとも知らずに……

 軽いストレッチをしながら潤一を待っていると、一台の自転車がライトを煌々と光らせながら、こちらに向かって走って来るのが見えた。

 「悪ぃ、遅くなった。……つか、先客?」

 自転車のスタンドを立てながら、潤一がブランコの先にあるベンチに視線を向けた。

 「ああ、そうなんだよ。でも変なんだ、ずっとあの場所から動かねぇの、あのオッサン……」


 俺が来てから、潤一を待つ間ずっと……


 「そっか、どうする、場所変える? ……って言ってもこの時間だし、他にここより条件の良い公園も近くにないし……」

 腕時計に視線を落とし、潤一が辺りを見回す。
 確かに潤一の言う通り、もうどっぷり日は暮れてるし、公園の周囲に民家はあるものの、幸いなことにそこそこ距離が離れているから、多少大きな音を出したって近所迷惑にはならない。
 勿論これ以上遅い時間に……ってなると話は別だけど、ここ以上に条件の良い場所もそうはない。

 「俺は別にここでも構わないけど……、潤一は?」


 そう……、俺は踊れりゃ場所なんて関係ない。


 けど潤一はそうじゃない。

 「うーん、そうだな……」

 前に別の公園で踊ってた時、潤一は足元が砂地になっていることが気になったのか、頻りに地面を爪先で蹴っては、足元を確かめているようだった。
 そして今目の前にいる潤一の表情を見ても、場所を変えることには乗り気じゃないのが見て取れた。

 「今日はやめとくか……」


 仕方ない、身体が動かせないのなら、頭の中で踊れば良い。


 自転車のカゴからキャップを取り出し、頭に被った。でも潤一はすぐに俺の頭からキャップを取り上げてしまった。

 「折角来たんだし、少し踊ってこうぜ? 期末も近いし、来週はあんま時間取れないからさ……」
 「あ、そうだった……」

 キザったらしくウィンクを寄越してくる潤一を見て漸く、俺は来週末に控えた期末テストの存在を思い出した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

機械に吊るされ男は容赦無く弄ばれる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

少年探偵は恥部を徹底的に調べあげられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

不良少年達は体育教師を無慈悲に弄ぶ

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

処理中です...