S/T/R/I/P/P/E/R ー踊り子ー

第10章 Rainy Kiss

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　「あの……さ……」

　適当な言葉なんて、どこをどう探しても出てきやしない。
　でも冗談じゃないと、真剣だと言う潤一の気持ちにはちゃんと答えないと……って、ただその一心だった。

　「俺良く分かんねぇんだけど……」
　「うん……」
　「俺お前のこと好きだよ？　でもさ、お前の好きと俺の好きは違うと思うんだ」

　潤一が俺に対して持っているのは、明らかな恋愛感情……だと思う。


　でも俺は……。


　潤一が踊る姿を見て格好いいとは思うし、一緒にいて退屈しないし、寧ろ楽しいし……、でもそれが恋愛感情かと言えば……やっぱり違う気がする。

　「うん……、分かってる。だから本当は言わずにいようと思ってた。でもさ、やっぱ言わずにいられなかったんだ……」


　だろうな。
　潤一の性格上、一度思ったことを胸に秘めておけるようなタイプじゃないし、思ったことはすぐに口にしたい、って思うのは分からないでもないけど……


　「なぁ、一つだけ聞いてもいいか？」
　「なに？」

　問いかける俺の頭に、潤一がコツンと顎を乗せる。

　「潤一はさ、俺と、その……どうなりたい？」

　俺としては、出来るなら今の関係を壊したくはない。
　潤一と踊るのは楽しいし、何より漸く見つけた自分が自分らしくいられる場所だから……

　「俺は……智樹とその……恋人として付き合いたいって思ってるよ？　でももし智樹が嫌だ、って言うなら……」
　「俺が嫌だって言ったら……、どうすんの？」
　「……諦める、と思う？　つかさぁ、俺回りくどいの苦手なんだ。とりあえずさ、お試し期間設けない？」
　「は、はあ？　何だよ、そのお試し期間って……」

　いきなり突拍子もないことを言い出す潤一に驚いて咄嗟に上げた顔を、潤一の熱い手が包み込んだ。

　「本気で嫌だったら、俺のこと蹴っ飛ばしても、殴ってもいいからさ……」

　でも顔だけはやめてくれよな、なんて冗談を言いながら、潤一の顔が徐々に俺との距離を縮めて来て……

　瞼を閉じる余裕もなく、潤一の唇が俺の唇に重なった。