S/T/R/I/P/P/E/R ー踊り子ー

誠奈

文字の大きさ
上 下
109 / 369
第10章   Rainy Kiss

10

しおりを挟む
 俺達はリュックを傘替わりに、雨宿りとばかりに近くのトンネルに駆け込んだ。

 「天気予報では一日晴れだったのに……」

 肩についた水滴を手で払い、雨空を見上げ松下が恨めしそうに言う。

 「そう……なんだ? つか、天気予報なんて気にすんだな?」
 「当たり前でしょ? 天気って意外と重要なんだから」

 天気予報なんて気にしたこともない俺は、意外な拘りに鼻を鳴らす松下から受け取ったタオルで髪を拭い、リュックから取り出したペットボトルのキャップを捻った。
 思いがけず走ったせいで、喉がカラカラに乾いていた。

 「ねぇ、今更なんだけど、《智樹》って呼んでもいい?」

 友達ならば当たり前のことことなのに、唐突に言われたせいか、胸がドクンと跳ね上がり、手にしたペットボトルが滑り落ちそうになる。


 なんだ……、この感覚……


 「……別に構わないけど?」

 ズキンと痛いような……、初めて感じる胸の違和感に、若干の戸惑いを感じつつも、俺は小さく頷いた。

 「マジで? あ、じゃあさ、俺のことも《潤一》って呼んでよ。だってほら、俺らもう一年経つじゃん? そろそろ、お互い他人行儀な呼び方から卒業しない?」

 別に名前の呼び方なんてどうでもいいと思いつつも、確かに松下……いや、潤一の言う通り、俺達がお互いを友達として認識するようになってからもう一年も経つのに、いつまでも名字で呼び合ってるのも、他人行儀な気はしないでもない。


 尤も、最初っから他人なんだけど……


 「つか、もう一年って、付き合ってるみたいな言い方やめれや」

 ほんの軽い冗談、のつもりだった。
 でも松下は顔を真っ赤に染め、俺が押し付けたタオルを両手でキュッと握り締めると、揶揄うように見上げた俺の視線から逃れるように、咄嗟に視線を逸らした。


 えっ……、何この状況。俺、何か変なこと言った……か?


 気不味い……とはまた違う、俺達の間に流れ始めた何とも微妙な空気に、俺は思わず視線を足元に落とした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

機械に吊るされ男は容赦無く弄ばれる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

少年探偵は恥部を徹底的に調べあげられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

不良少年達は体育教師を無慈悲に弄ぶ

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

処理中です...