S/T/R/I/P/P/E/R ー踊り子ー

誠奈

文字の大きさ
上 下
106 / 369
第10章   Rainy Kiss

しおりを挟む
 流れてきたのは、あの曲に合わせて踊る松本の姿で……

 「これ……、お前?」
 「うん、まあ……」

 小柄な俺とは違う、長身と長い手足を活かしたダイナミックで、尚且つセクシーなダンスに、俺の視線が釘付けになる。


 やべぇ……、かっこいいじゃん……


 決して上手いとは言えないけど、松本のダンスには、何か惹きつけられる物を感じる。

 「あ、ここ!」

 食い入るように見ていた俺は、松下が突然上げた大きな声に身体をビクッと震わせた。

 「ここのステップがさ、イマイチ決まんなくてさ……。何かいいアイデアない?」
 「は、はあ? 何で俺に聞くんだよ……」
 「いや~、大田君だったらどうするかなぁ、って思ってさ」

 満面の笑みを向けてくる松下に、面倒臭さを感じてしまう。


 はぁ……、やっぱ来んじゃなかった……


 後悔を感じつつも、やっぱり頭の中で作り上げた振りを試してみたくて……

 「いいか、一回しかやんねぇからな?」

 ベンチから腰を上げると、用意してあったプレイヤーの再生ボタンを押した。

 何度も……それこそ耳にタコが出来るくらいに、何度も繰り返し聴き込んだ曲がプレイヤーから流れ出す。瞬間、俺の頭の奥でカチリと音を立ててスイッチが入った。

 俺は流れる曲に合わせ、頭の中で思い描いた通りに身体を動かし、ステップを踏んだ。


 無心……だった。


 松下がその日本人らしくない濃い顔をキラキラ輝かせ、スマホを片手に俺を見ていることさえ気にならないくらいに、ただただ音楽に身を委ねることだけを考えていた。
 すると、それまで想像でしかなかった振りが、俺の身体を通して形になって行くのが分かって……。

 それが嬉しくて、楽しくて……、最高に幸せな時間だった。

 やがて曲が終わり、最後のポーズを決めた俺は、フッと息を吐き出すと、着ていたダウンの前を開けた。

 五分にも満たない、僅かな時間……、それでもTシャツは汗でしっとりと濡れていて、乾いた喉を潤そうと、自転車のカゴにあったペットボトルを手にベンチに座った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

機械に吊るされ男は容赦無く弄ばれる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

少年探偵は恥部を徹底的に調べあげられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

不良少年達は体育教師を無慈悲に弄ぶ

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

処理中です...