S/T/R/I/P/P/E/R ー踊り子ー

誠奈

文字の大きさ
上 下
105 / 369
第10章   Rainy Kiss

しおりを挟む
 音楽プレイヤーの電源を入れ、イヤホンを耳に嵌め、今にも再生ボタンを押そうとした、丁度その時、

 「あれ? もしかして大田君?」

 背後から聞こえた、聞き覚えのある声に振り返った俺は、暗くなった視界に目を凝らした。


 えっ、あ……、アイツ……


 「うっそ、マジで来てくれたの? うわー、超嬉しいんだけど!」
 「い、いや、別にそういう訳じゃ……」

 のっけから妙にハイテンションな松下潤一に、若干の戸惑いを感じる。
 だって俺にしてみたら、いつも練習している場所に先客がいたから、仕方なくここに来ただけで、それ以外に深い意味なんて……多分ないから。


 それに今日の今日なんて……、なんか期待してたみたいで、恥ずいじゃんか……


 「あ、ねえ、丁度良かった。実はさ、最近超気に入ってる曲があってさ……。ちょっと聞いてみてくれる?」

 戸惑いを隠せないままの俺を他所に、松下潤一は俺の耳からイヤホンを引っこ抜くと、代わりに自分のスマホから伸びたイヤホンの片方を俺の耳に突っ込んだ。
 そしてもう片方を自分の耳に突っ込み、目で俺に合図を送るとスマホをタップした。

 流れてきたのは、R&B独特のリズムの音楽で……


 あれ、この曲って……


 イントロが流れた瞬間、その曲が俺が何度も頭の中でイメージを作ってきた、あの曲だと言うことに気付いた。

 そうして一つのプレイヤーから流れる曲を二人で共有しながら、一人で聞いていた時とはまた違った印象を受ける音の数々に、一度は出来上がった筈のイメージを更に膨らませた。

 「どう? いい曲でしょ?」

 曲が終わると同時に耳からイヤホンを引き抜き、端正な顔を綻ばせた。

 「まあ……な」

 嘘なんてつけなかった。
 まさかさっきまで何度も繰り返し聞いていた曲を聞かされるとは思ってなかった俺は、そう頷くことしか出来なくかった。

「でしょ? でさ、これ見てくれる?」

 松下が差し出してきたスマホを受け取ると、そこに表示されていた動画再生のボタンをタップした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

俺と両想いにならないと出られない部屋

小熊井つん
BL
ごく普通の会社員である山吹修介は、同僚の桜庭琥太郎に密かに恋心を寄せていた。 同性という障壁から自分の気持ちを打ち明けることも出来ず悶々とした日々を送っていたが、ある日を境に不思議な夢を見始める。 それは『〇〇しないと出られない部屋』という形で脱出条件が提示される部屋に桜庭と2人きりで閉じ込められるというものだった。 「この夢は自分の願望が反映されたものに違いない」そう考えた山吹は夢の謎を解き明かすため奮闘する。 陽気お人よし攻め×堅物平凡受けのSF(すこし・ふしぎ)なBL。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

年上の恋人は優しい上司

木野葉ゆる
BL
小さな賃貸専門の不動産屋さんに勤める俺の恋人は、年上で優しい上司。 仕事のこととか、日常のこととか、デートのこととか、日記代わりに綴るSS連作。 基本は受け視点(一人称)です。 一日一花BL企画 参加作品も含まれています。 表紙は松下リサ様(@risa_m1012)に描いて頂きました!!ありがとうございます!!!! 完結済みにいたしました。 6月13日、同人誌を発売しました。

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...