S/T/R/I/P/P/E/R ー踊り子ー

誠奈

文字の大きさ
上 下
94 / 369
第9章   For You 

10

しおりを挟む
 ダンサーとしてステージに立てないのであれば、もうここに俺の居場所はない。

 諦めにも似た感情のままドアノブに手をかけたその時……

 「ちょっと待てって……。さっきから黙って聞いてりゃ、お前何勘違いしてんだ」

 翔真の、僅かに怒気を含んだ声が俺の足を引き止めた。

 「俺は別に勘違いなんて……」

 肩を落とす俺の背中に、コツコツと聞き慣れた足音が近付いてきて、そして足音が止まった瞬間、俺の身体は翔真の腕に包まれていた。

 「離せ……よ」
 「やだね、離さない」
 「離せって……。もう俺は必要ないんだろ? だったら……、んっ……!」

 翔真の腕を振り払おうと、肩越しに振り返った俺の唇に、翔真の柔らかな唇が重なった。


 どう……して……


 触れただけの唇はすぐに離れ、代わりに翔真の手が俺の頬を包み込む。

 「……ったく、どこをどう解釈したら必要ないなんてことになるんだよ……」
 「だってそれは……」


 俺をステージに立たせたくないって……、そう言ったのは翔真、お前じゃねぇか……


 「あんなぁ……、いいか一度しか言わねぇから、良く聞け?」


 聞きたくない……


 出来ることなら耳を塞いでしまいたい、そんな衝動に駆られる俺を、首筋や耳元にかかる翔真の熱い吐息がそれを許さない。

 「お前をステージに立たせたくないって言ったのは、お前のあんな姿を、誰にも見せたくないと思ったからだ。誰の目にも触れないよう、ずっとこの腕の中に閉じ込めておきたいって、……そう思ったからで、必要ないとか、そう意味で言ったわけじゃない」


 普段決して口にすることのない、翔真の胸の奥底に秘めた独占欲……


 俺は翔真の腕の中で身体の向きを変えると、涙で滲んだ目で翔真を睨め上げた。

 「だったらそう言えば……」


 言ってくれれば、俺だってこんなとんでもない勘違いしなくて済んだのに。


 「バ、バカか、言える訳ねぇだろ……、ンな恥ずいこと……」

 そう言って俺の視線から逸らした翔真の顔は、今まで見たことないくらい、耳まで真っ赤に染まっていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

機械に吊るされ男は容赦無く弄ばれる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

少年探偵は恥部を徹底的に調べあげられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

不良少年達は体育教師を無慈悲に弄ぶ

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...