S/T/R/I/P/P/E/R ー踊り子ー

誠奈

文字の大きさ
上 下
89 / 369
第9章   For You 

しおりを挟む
 健太に介助されながら、楽屋から舞台袖へと続く階段を降りて行く。

 体力に自信がないわけじゃないが、ウィッグを含めると30キロ近くはある衣装を纏っての移動は、それだけで体力を奪う。


 こんなことなら、翔真みたくもっと筋肉付けときゃ良かった……


 諦めと、僅かな自分への失望に溜め息を落とした丁度その時、やっとの思いで階段を降りた俺を、感嘆を思わせる溜め息と、客席に聞こえない程度の拍手が出迎えた。

 「めちゃくちゃ綺麗ですよ、智樹さん」

 スタッフ連中に混じって俺に声を掛けて来たのは、最近になってダンサーとして入店したばかりの友介だ。

 小柄で、一見女と見間違えるくらい、可愛らしい顔立ちをしているが、ダンスは中々の腕前で、まだステージには立っていないが、すぐに友介目当てのファンが付くことは、俺にだって容易に想像出来る。


 こりゃうかうかしてらんねぇな……


 「智樹さん、こちらへ。足元、気を付けて下さいね」
 「お、おぅ……」

 健太の手を離れ、代わりにスタッフに手を引かれ舞台下へと進む。
 そしてステージと同様の板を貼った丸い台に立たされた俺は、そこから見える、まだ灯されてもいないスポットライトを見上げ、大きく息を吸い込んだ。

 今回の改修工事で翔真が最も力を入れていたのが、今までのステージには無かった奈落ならくだ。

 翔真がどれ程の思いで、この設備に多額の資金を投じたのか……、俺はすぐ側で見てきたから良く知っている。だからこそ失敗は許されない。
 胸いっぱいに吸い込んだ息を全て吐き出し、俺は濃いメイクを施した瞼を閉じた。

 「イントロ始まって、十秒後に上がりますんで……」
 「分かった。カウント頼むわ」
 「了解!」

 まるでその声が合図だったかのように開演を知らせるブザーが鳴り、それまで騒然としていた現場の空気が、一気に緊張に包まれた。

 そして流れ出した和楽器が奏でるメロディーと、スタッフのカウント。


 いよいよだ……


 俺はボルテージを一気に上げた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

機械に吊るされ男は容赦無く弄ばれる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

不良少年達は体育教師を無慈悲に弄ぶ

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...