S/T/R/I/P/P/E/R ー踊り子ー

誠奈

文字の大きさ
上 下
87 / 369
第9章   For You 

しおりを挟む
 「メイク、いつもより濃いめにしておきますね」
 「ああ、任せる」

 健太の腕は確かだ。
 丁寧なメイクは、俺に当てられる照明と衣装とのバランスが、見事なまでに計算され尽くしている。
 俺よりも幾つか年下なのに、あの翔真が信頼するだけのことはあると、鏡の中で徐々に変わって行く自分の顔を見つめながら、そう思った。

 「こんな感じでどうです? 後はウィッグだけですけど、衣装着ちゃってからの方が良さそうっすね」
 「そう……だな……」

 内心、これを頭に乗っけて踊るのかとも思ったが、それはそれで健太が衣装に合わせて用意してくれた物だから、仕方ないと思って諦めるしかない。

 「踏んづけないようにしねぇとな……」
 「ですね。でも智樹さんなら大丈夫っすよ」


 いやいや、その《大丈夫》の意味が分かんねぇけど……


 「じゃあ、そろそろ衣装に着替えちゃいましょうか」

 健太が俺から離れ、ハンガーラックに掛けられていた衣装を手に取り、畳の上に広げた。
 想像以上のデカさにビビリはしたものの、織りの細やかさと、日本古来の伝統を感じさせる色味には、目を奪われる物があった。

 「失礼しますね」

 健永が俺のシャツのボタンに手をかけたその時、一瞬アイツらの顔が俺の脳裏を過ぎった。
 下卑た笑いを浮かべながら、俺の身体を散々弄んだ、アイツらの顔が、まるで走馬灯のように入れ代わり立ち代わり俺の脳裏に浮かんでは、また消えた。


 もう大丈夫だと思ってたのに……


 「悪ぃ、自分でやる……」

 俺はボタンを外しにかかった健太の手を掴むと、戸惑う健太に背を向けるようにしてシャツを脱ぎ捨てた。
 続けてスラックスと下着まで下ろした俺は、健太の手からラメ入りのボディークリームを受け取ると、それを身体中に塗り付けた。
 でも背中だけは、どう頑張ってみても自分の手ではどうにもならなくて、

 「頼む……」

 仕方なく健太に委ねることにした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

少年探偵は恥部を徹底的に調べあげられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

俺は触手の巣でママをしている!〜卵をいっぱい産んじゃうよ!〜

ミクリ21
BL
触手の巣で、触手達の卵を産卵する青年の話。

処理中です...